
森トラスト株式会社は16日、国土交通省が発表した「令和7年都道府県地価調査」について、伊達美和子社長のコメントを発表した。訪日客増加による地方観光地の地価上昇が継続するなか、観光需要の地方拡大に期待を示した。
都心オフィス需要堅調、赤坂新ビルは内定率95%超
都心のオフィスビル市場について伊達社長は、「引き続き空室率は低下傾向であり、賃料は上昇基調」と述べた。企業のオフィス回帰による規模拡張ニーズや、人材獲得のための立地改善要望などから、新築・既存ビルともに引き合いが多いという。
同社が10月に第2期竣工を迎える予定の「東京ワールドゲート赤坂」のオフィス内定率は95%を超えている。
観光需要の地方拡大で地価上昇地域広がる
地方圏については、観光需要の高いエリアで店舗需要の高まりや各種開発事業の進展から地価上昇トレンドが継続していると分析。伊達社長は「人気観光地への需要の偏在は引き続きあるものの、地方におけるインバウンド増加率は三大都市圏を上回っており、観光需要が地方へ拡大している」と指摘した。
特に奈良県奈良市、長野県白馬村、岐阜県高山市などではインバウンド需要が地価上昇をけん引。岐阜県高山市では昨年1年間で過去最多の約77万人の外国人が観光に訪れた。
同社グループが奈良市の興福寺近くで運営する「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」では、宿泊客の3~4割を外国人観光客が占め、2023年の開業以来その割合は増加傾向にあるという。
持続可能な観光基盤の整備を提言
森トラストグループは2025年の訪日外客数を4,300万人規模、観光収入を10兆円超と見込んでいる。伊達社長は「インバウンドによる経済波及効果を人気観光地以外の地方都市にも拡張するためには、顧客ニーズに合った観光地となるべく機能の更新を進め、各地が受け皿の整備を急ぐ必要がある」と述べた。
第5次観光立国基本方針では「全国における持続可能な観光産業の基盤づくりの強化を明確に掲げる必要がある」との見解を示した。
一方で、米国の関税措置や地政学的リスクなど景気動向を左右する不透明要素や、建築費高騰・人手不足による建設コスト上昇も懸念材料として挙げた。
同社グループは「目まぐるしく変化する国内外の情勢に対応しつつも、中長期の視点に立ち、首都圏および地方都市の経済発展に貢献していく」としている。
森トラスト株式会社は都心部の大型複合開発や全国のホテル&リゾート事業を手掛ける総合不動産ディベロッパー。全国に33ヶ所のホテル・リゾート施設を運営するほか、16件の新規ホテル開発プロジェクトを推進している。
伊達社長