【旅館経営ワンポイント講座 48】将来ビジョンを明確にする 渡辺清一朗


 「そんな顔してないで元気出せよ。まずはさぁ、自分自身の現時点での決算をやってみようよ」

 50歳を目前にした年下の旧友。定年まではまだ数年あるものの、今後の人生を考えると「このままでいいのだろうか」との思いが日に日に募るらしい。とはいえ、簡単に新たなステージが見つかるわけでもなく、40歳を過ぎると企業の求人は極端に少なくなるという現実も分かっている。悶々(もんもん)とする毎日が続いているらしい。

 そこでまず、個人の決算をやってみましょうと提案した次第。

 (1)貸借対照表(B/S)をイメージする。企業決算のように厳密に行う必要はない。

 手持ち現金・預金、債権や株式などの有価証券、土地、建物くらいで十分。有価証券・土地建物(マンションを含む)等は今売却したらどのくらいの金額になるのかを把握することが大切だ。

 そして次に、借金(住宅ローン、教育ローン、リボルビング等)の残高の確認。ここまでの数値を把握すると、突然自分の存在がなくなった時にいったいどのくらいの財産、あるいは借金が残るのかが分かる。

 そしてもう一つ把握しておかなければならないのは、生命保険の内容だ。掛け捨て型なのか、積み立て型なのか、最先端医療に対応しているかなども確認しておきたい。

 (2)損益計算書(P/L)をイメージする。といっても企業決算のように過去の実績は必要ではない。現在の状況を把握して未来を予想する。

 収入(売上)を把握する。現状の給料、退職金(早期退職の割り増しなどもつかんでおく)、国民年金、厚生年金、企業年金などを明らかにしたい。1年単位で構わないので、いつ会社を辞めたらどのくらいの収入があるかをシミュレーションすることが大切だ。

 次に、予想される支出をつかむ。ローンやリボルビングなどの金利と元金。子供たちの教育費。親の介護にかかるであろう費用。家族が生活してゆくための最低限の費用などだろうか。

 (1)と(2)を大まかにつかみ、いくつかのパターンを導き出すことによって何歳で退職したらいくらの財産(あるいは借金)が残るので、次の人生で必要になるであろう収入を予想することが可能となる。

 例えば35歳独身という状況ならばここまでの数値把握をすることなく新たな環境をスタートするということが許されるのかもしれない。

 しかし、養うべき家族があり過去よりも残された人生のほうが間違いなく短い、というような状況ではそうはいかない。現実を冷徹に見定めたうえで将来を熟考することが必要となる。「数字に落とし込んでみることって本当に大切だなあ。イメージが明確になりました」とはくだんの友人。

 会社にとっての決算は過去から現在までの話でしかない。過去と現在に一喜一憂するばかりでは道が開けることはない。将来のビジョンを明確にし数字と行動の裏付けのある将来計画を示すことができない経営者は退場するしか道はない。為念。

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 sero-1117@giga.ocn.ne.jp(EHS研究所会長)
       

 
 
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