【VOICE】観光と移動は別々のものか モビリティジャーナリスト 楠田悦子氏  


楠田氏

稼ぐ力高める2次交通

 観光と移動を、別々のものとして捉えていないでしょうか。
 
 私は10年以上にわたり公共交通や自動運転、電動キックボードなどのデジタルを活用した新しい移動サービスや自転車や電動車いすといった移動手段の取材をしたり、国土交通省、地方公共団体が移動手段やそのサービスの計画を立てる際の有識者会議の委員や、民間企業がサービス開発や経営戦略を立てたりするサポートをしています。 

 私は10年以上にわたり公共交通や自動運転、電動キックボードなどのデジタルを活用した新しい移動サービスや自転車や電動車いすといった移動手段の取材をしたり、国土交通省、地方公共団体が移動手段やそのサービスの計画を立てる際の有識者会議の委員や、民間企業がサービス開発や経営戦略を立てたりするサポートをしています。
 
 全国を訪れ、地域の移動について課題を考えてきました。なかでも近年特に増えているのが、観光業界の方々からの「2次交通」に関するご相談です。
 
  講演会やワークショップでは、ライドシェア、観光MaaS、AIデマンド交通、グリーンスローモビリティ、自転車・電動キックボード、自動運転、バスやタクシー会社との付き合い方といったテーマに高い関心が寄せられています。
 
 一方で、観光に携わる方々が交通の基礎知識を十分に持っていない場面にも多く出会います。これは個人の問題ではなく、観光と交通が別領域として扱われていることが背景にあると感じています。たとえば、自治体では観光部局がイベント運営を主に担い、交通施策は別の部署が担当するのが一般的です。
 
 民間事業者も、宿泊施設や観光施設の運営に注力するあまり、周辺の交通環境には踏み込みづらいのが現状です。さらに、大学で観光交通論の授業はありますが、観光地内交通を交通と観光の両面から研究する専門家もまだ少ないようで、体系的に学べる機会も限られているそうです。
 
 現状を少しでも変え、2次交通の事例と学ぶ機会が増えることを期待し、私は今年2月に『二次交通の教科書―地域の稼ぐ力を高める―』(やまとごころBOOKS)を出版いたしました。
 
 本書では、地域における移動インフラ整備の必要性や、訪日観光客の動線設計、交通データの活用法、新しい移動サービスの導入方法など、実務に役立つ情報をまとめています。モビリティサービスの動向を全般的に把握したい方にも良いと思います。
 
 「観光客を呼び込みたいけれど、移動手段がない」という声は、全国各地で繰り返し耳にします。こうした声に応えるには、交通と観光の間にある見えない壁を越える視点と仕組みづくりが求められます。観光を地域の稼ぐ力に変えていくには、移動という視点を欠かすことはできません。
 
 観光の未来は、交通への理解から始まるのかもしれません。その一歩を、ぜひ多くの方々とともに踏み出していきたいと考えています。


楠田氏

 
 
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