【北海道・層雲峡 観光活性化特集】大雪 森のガーデン 新たなステージへ


昨年、開園10周年 3エリアで構成 1000種超える植物群

 北海道の雄大な自然あふれる大雪から旭川、富良野、帯広、十勝までの全長250キロに、八つの庭園が並ぶ「北海道ガーデン街道」。その一つ、「大雪森のガーデン」(上川町)は最北のガーデンで、人気温泉地・層雲峡温泉から車で40分ほどの距離にある。昨年、開園10周年の節目を迎えた。内容、質ともに充実し、新たな一歩を歩み始めた。


ロゴ

大雪森のガーデンは、大雪連峰を望む丘稜に広がる森に造られたガーデンで、北海道らしい雄大な景色が眼前に広がる。


大雪森のガーデンの入り口

 5・5ヘクタール(東京ドーム3・5個分)の広大な敷地には千品種を超える植物があり、色彩豊かな宿根草が咲き誇る「森の花園」、自然の木々やかれんな山野草に囲まれて寛げる「森の迎賓館」、緑あふれる「遊びの森」の三つのエリアがある。


四季折々の草花が訪れる人の心を癒やす

 森の花園は「大雪な庭」「四季のすみか」「花の泉」「カムイミンタラ」とそれぞれの独自の魅力を持つガーデンで構成され、シーズンごとに全く異なる風景を楽しめる。

 たとえば、大雪な庭は、大切と大雪を重ね合わせ、上川を象徴する大雪山系の植物を大切にしたいという思いを込めて、大雪山で見られる高山植物や北海道の自生種を植栽している。

 森の迎賓館は、「森のゲートウェイ」「森の絨毯(じゅうたん)」「森のリビング」「癒しの谷」「森の博物館」という個性豊かな五つのゾーンでなっている。

 遊びの森にある、木と木に梁を渡して作った「鳥の目になるテラス」は地上4メートルの高さから森の中の風景を見渡すことができる。また、木の絨毯が斜面に約40メートルにわたって並ぶ「森の木琴」では、木の球を転がすとバッハのプレリュードを奏でてくれる。

 このほか、直径8メートルと4・5メートルの巨大なリング型のベンチや交流体験棟「チュプ」がある。

 園内にはカフェ「緑丘茶房」やショップ、フレンチの重鎮、三國清三さんがプロデュースした「フラロッテ・ディ・ミクニ」などもあり、ガーデンならではの味が楽しめる。

 ガーデンの営業期間は4月26日~10月13日。営業時間は午前9時~午後5時。入園料は一般800円、中学生以下無料。年間ガーデンパスポートは一般1500円。JR上川駅前からガーデンまで往復シャトル便が運行されている。問い合わせはTEL01658・2・4655。

魅力あるガーデン造りにまい進-現場から

10年目の節目を迎え、踏み出した一歩

施設管理マネージャー 田川雅巳さん

田川さん

 森のガーデンで働きだして今年で11年目になります。昨年、開園10周年でしたので、ガーデンの歴史とともに歩んで来ました(笑)。当たり前ですが、植物の種類も増え、園全体は相当グレードアップしています。

 現在は施設管理マネージャーとして、園内と園の周囲の植物の維持・管理を行っています。植え替えや手入れ、除草など何でもやっています。

 当園は「北海道ガーデン街道」の一つですが、大雪山連峰を望む丘陵に広がる森に造られており、まさに自然の中にあるガーデンです。ラーメンに例えると癖(くせ)が強めの味。トッピングは「自然」という、他のガーデンにないもので、これが大きな武器ですね。

 標高が600メートルを超え、冷涼な気候のため、他には見られない植物があります。その一つが6~7月に咲く「メコノプシス」。ヒマラヤの青いケシと呼ばれ、気温28度以下の環境でしか咲きません。

 植物の種類は1500種ほど。森林限界に近いところにあるガーデンなので、樹木一つをとってもテイストは違います。分かる人は分かる、といった感じですね。精魂込めて手入れをしているので、それを理解してもらえるのはとてもうれしいです。

 最近は外国人の方も多く、特に韓国、台湾の人たちが目立ちます。

 10年の節目を迎え、新たな一歩を踏み出したわけですが、いい意味でも悪い意味でもそんなに変わる必要はないかな、と思っています。自然相手ですので、こちらの思うようにはいきません。いい感じに変わっていくよう、サポートするといったらいいでしょうか。

 今年も10月中旬まで営業します。冬の間もまたいろいろな作業があり、休園だからといって休んでいる暇はありません。若いスタッフが増えているのがうれしいですね。見た目以上に過酷で、ヘビや虫などもいっぱいいます。それを気にしないで働く姿に感心します。一緒に盛り上げていきたいです。

大自然と人間が共存する場所

営業企画マネージャー 岩城泉さん

岩城さん

 大雪高原旭ヶ丘、山麓に広がる丘陵地に造られた美しい庭「大雪森のガーデン」。北海道ならではの気候かつ強靭(きょうじん)な四季の厳しさを兼ね備えた、美しい森庭がここにあります。

 大雪山連峰のダイナミックな自然と生態系に触れられる、山岳リゾートと呼ぶにふさわしい大景観を眺めに、個性豊かな人間の創造と尽力が森庭を守り続けています。

 大雪森のガーデンはまさに大自然と人間の共存がメイン活動になる大仕事であり、ご来園の皆さまには私たちガーデンスタッフの人間らしさが表現されていることをそこここに目にすることができます。当園の手仕事、庭の見どころ、魅力どころを心から感じ体験していただきたい。

 当園には、森の迎賓館を中心として、原生樹をそのまま生かした森を管理する特別なガーデナーが存在します。四季を華やぐ千種類を超える宿根草を守るガーデナーたちと、あまたのお客さまを笑顔にした入園窓口のおもてなしスタッフ。大雪高原旭ヶ丘を知り尽くした施設管理者のもとで、自然を活用し、新たな取り組みを始めています。

 それは多くの年代が楽しく過ごせる装花・花のおもてなし、大雪森のガーデンならではのオリジナル商品の開発です。

 2025年度、ガーデンコンセプトを確立させる第一歩として、ガーデナーの水彩スケッチによる商品デザインが誕生しました。四季折々で出会える動植物や花の営みそのままを伝えられる、ナチュラルな絵のタッチで心を込め描かれた、大雪森のガーデン。それらはお客さまの手に目に触れられるガーデンシーズンパスポートの表紙や、上川町物産のパッケージになり、さらにご自宅で愛され飾られるガーデンオリジナルカレンダーの誕生へと進化してきました。

 大雪高原旭ヶ丘は、層雲峡温泉と位置標高は等しく、上川町が誇る観光人口に対して庭園ならではの魅力で集客に尽力することを、おもてなしのミッションとして目指しています。

 観光地としての話題性、事業拡大という営業運営の視野の中には、こうして働く人間一人一人の温かみを届けられる、丁寧な作業をより大切にしていきたいという願いが込められています。数ある作画を手に取ってご覧になった方からいただく言葉は、さらにわれわれを励まし続けていることこそ、それを証明しています。

 若きガーデナーを支える当園にとっての新たな時代に、大雪森のガーデンとしてより北海道らしい森庭が魅せられる自信を持ち、またそれを大きく期待しています。その気持ちを表現するように、人々へつなぐ広告のモチベーションとアイデアを高めて、花の魅力をより美しく反映できる、より楽しませるコマーシャル作りに力を入れることに尽力いたします。

大雪森のガーデンを丁寧に伝える営業企画力。マネジメントとしての挑戦と、温かいひとときをつなぐ、貴重な仕事を生み出す確かな第二歩となるように頑張りたいと思います。

大自然の森の中に存在、生態系身近に

ガーデナー 浦野もえぎさん

浦野さん

 神奈川県から上川町に移住し、ガーデナーとして働き始めて今年で3年目になりました。「大雪森のガーデン」を初めて訪れたとき、関東のガーデン造りや植生の違いに驚きました。

 このガーデンの大きな特徴は、大自然の森の中に造られているということです。地形を生かした園路は起伏が大きく、いろいろな角度から森を眺めることができます。

 大自然に囲まれた庭には、植物だけでなく野生生物も多く生息しています。植物と動物の関わり、生態系を身近に観察することができるのも魅力の一つですね。

 最初はこの土地の環境を知ることと、目まぐるしく変化する景色についていくのがやっとでした。見慣れない植物ばかりで、なじみのあるものでも開花時期や育ち方、管理の仕方も全く異なり、特に冬に向けた作業は経験したことのないことばかりでした。

 そんな中、「森の迎賓館」というエリアを任せていただき、管理だけでなく植栽のデザインも担うようになりました。森本来の姿を色濃く残したこのエリアは、もともと自生している植物が多く植えられています。その野草たちとの調和がとても重要で、慎重にせん定しなければなりません。また、管理の面でもどこまで人の手を加えるかなど、自然とのバランスを保つことの難しさを実感しました。

 3年目に入り、ようやく少し余裕を持てるようになった今年は、新たな挑戦としてガーデンオリジナル商品の作画にも携わらせていただきました。もともと絵を描くのが好きでしたが、いざ描いてみると、普段細部まで見ている風景も、絵で表現するのはとても難しく、試行錯誤の連続です。

 来年のカレンダーの表紙やシーズンパスポートのデザインも私の作品です。手に取って見ていただけたらうれしいですね(笑)。これからもガーデンの魅力を伝える手法の一つとして、技術を磨いていきたいと思います。

 そして森の迎賓館では、一部エリアのリニューアル計画も進行しています。新たに園路を造設し、植栽のデザインも変えていきます。初めて訪れる方はもちろん、何度も足を運んでいただいているお客さまにも、新鮮に感じていただけるよう、これからも新しい風景を作り続けていきたいと思います。

充実するガーデングッズ


▲カレンダー 大雪山連峰を背景に、四季の花々を織り交ぜ、この森に住む生き物たちを散りばめた。ガーデンの雄大な風景と季節の移ろいを感じてもらえるよう、思いを込めて描いた。(作画:浦野もえぎ)


▲パスポート この絵は実際にあるガーデンの風景を描いた。座りたくなるベンチと周りを囲う植物は、温かみのある柔らかな雰囲気になるよう描いた。(作画:浦野もえぎ)


ガーデンショップ


ロゴ刺しゅう入りオリジナルハンカチ

拡大


関連キーワード
 
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒