
中潟氏
宿を中心とした関係人口の創出へ
那須塩原の板室温泉で、ゲストハウスLeu.(レウ)のコーディネーターをしている中潟です。
当館は、もともと「源泉ほたるの湯」という名の温泉施設で、30年地域の人たちに親しまれてきました。
しかし時代の変化とともに休業。そんな場所を、時代に合わせてリノベーションし、「地域の寮のような宿」として再生させたのがレウです。運営する株式会社SAWANAは、併設する「那須フィッシュランド」も40年以上営業している、地域に根ざした会社です。
レウは、単なる宿泊施設ではありません。私たちが目指しているのは、地域課題の解決に寄与するゲストハウス。地方が抱える多くの課題に対して、訪れる人と地域がともに関わりながら持続可能な仕組みを作っていくことを大事にしています。
都市と地方、旅人と地元の人、若者と年配者が自然に交ざり合い、たき火を囲んで語り合ったり、そんな中で生まれる出会いや物語は、この場所、この瞬間にしか起きない特別なものです。消費型の観光とは異なり、人と人がしっかりとつながる旅。レウは、そうした「観光の中の、もうひとつの価値」を実現できると信じています。
来てくれる人たちは単なるお客さまではなく、地域にとっての仲間です。一緒に地域を盛り上げる関係性を築くことが私たちの目標です。
実際、宿泊者がレジャー事業者のアルバイトとして働いたり、地域イベントに参加したり、地元の日常に自然と溶け込める仕組みを作っています。「今度は友達を連れてきたい」「またここで手伝いたい」―そんな声が、観光をさまざまな形で地域に関わる「関係人口」につなげると感じています。
レウは移住や多拠点生活、地域人材の育成など、多方面のテーマに取り組んでいます。何より大切なのは「人と那須と物語」の交差点をつくり続けることです。
レウがあるから那須に来た、と言ってもらえることがあります。観光地にある宿ではなく、宿があるから人が集まる。そんな関係を地域と共につくっていきたいと日々感じています。ここでしか出会えない瞬間、ここでしか生まれない関係。それが、私たちがこの場所で見いだしたい「観光の本当の意味」だと信じています。
これからの観光は、地域と旅人がともに成長し、支え合う営みであるべきだと考えます。私はその実践の場として、レウがこれからも挑戦を重ね、ここで生まれた物語がまた次の誰かの旅のきっかけになることを願っています。
中潟氏