
松田氏
開業40周年を迎え、今、取り組むべきこと
ホテルという事業を40年間持続するために必要なものは何か。その答えを、この節目の年に改めて考えてみることにした。当ホテルは本年6月に開業40周年を迎える。「よくここまで来られた」というのが、開業時から関わってきた一人としての偽らざる思いだ。
というのも、当ホテルは旧国鉄時代からの事業で、ホテルとしての立地、客室ミックス、宴会場・レストランのバランスなど、経営を考えると非常にかじ取りが難しいホテルであったが、「食ブランド」を前面に打ち出すとともに、地域との連携を重視した運営を継続してきた。
40年を振り返ると、バブル時代、リーマンショック、コロナ禍、アフターコロナと、まさにジェットコースター経営だった。地域や自治体と連携した大規模防災訓練の継続的実施やコロナ禍では1日も休まず営業を継続したこと等、地域の皆さまに高く評価されてきたが、ここにきて、社会的な役割を担いつつ、ようやく本来の適正な利益を上げられるホテルに成長してきた。
この間、マーケットの変革に合わせモードチェンジしてきたが、昨今では旺盛なインバウンド需要の取り込み、宴会ミックスの最適化、人材の確保・育成、成長戦略を描いた設備投資などを積極的に進めている。特に、当ホテルの宿泊部門は国内中心であったため、インバウンドのお客さまニーズを徹底的に分析するため、外国語表記のゲストコメントなどから情報収集し、可能なことからいち早く顧客満足度の改善に努めている。
また、宴会料飲マーケットもアフターコロナで大きく変化してきた。千代田区の飯田橋・九段下・市ヶ谷を中心とするエリアの迎賓館的な役割を担い、お客さまのあらゆる宴会需要に対応できるような宴会場のリニューアルや、開業以来、お客さまに高い評価を得ている食ブランドを再構築するための新たな料飲施設の準備を急ピッチで進めている。
食品ロス削減として政府の進める食べ残しの持ち帰りを、日本ホテル(株)の運営するホテルで業界の先陣を切って開始したが、今では業界への普及活動を精力的に取り組んでいる。このような取り組みは、SDGsの目標達成に貢献するサステナブル経営を実践する企業として、投資家、消費者等のステークホルダーから評価されることにもつながり得るといわれている。
やはり、この地で事業を営むにあたり、社会的な役割を担ったうえで、地域やお客さまの評価を得ながら地道に事業展開を進めることが、持続可能なホテル運営として、今求められていることではないか。
松田氏