旅行幹部たちが語る「インタレストメディア」の台頭


SNSは旅行者の予約習慣を永遠に変えた。新たなインスピレーションの源を追加し、インフルエンサーという存在も生み出した。しかしVaynerX会長でありVaynerMediaのCEOであるGary Vaynerchukは、我々が「ソーシャルメディアの次の時代=“インタレストメディア(興味関心メディア)”に入った」と最近主張している。

インタレストメディアとは、特定の興味や関心を持つユーザーに焦点を当てたメディアのこと。特定の趣味や専門分野に特化したウェブサイトやブログ、SNSアカウントなどがインタレストメディアに該当する。

「ソーシャルメディアの変革は完了した」とVaynerchukはLinkedInに書いた。「私は、もはや“ソーシャルメディア”という言葉自体、見直す必要があると本気で思っている。我々はいま、“ソーシャル”ではなく“インタレストメディア(興味関心メディア)”の時代に入っている」と、投稿に添えた動画の中で彼は語っている。「ソーシャルとは本来、あなたの“ソーシャルネットワーク=友人や知人”のことだった。しかし今は、自分が興味のあることがアルゴリズム経由でどんどん届けられる時代だ」。

旅行業界の専門家たちも、この認識に同意している。

ホテルOTA「@Hotel」の共同創業者兼CEOであるKonrad Waliszewskiは、Vaynerchukの考えに「まったく同感」と述べた。「今のプラットフォームは、ユーザー自身よりもユーザーのことをよく理解しているほどです」とWaliszewskiは言う。「人がコンテンツと関わる方法は主に2つ。ひとつは、アルゴリズムがその人の関心に基づいてコンテンツを届けてくる。もうひとつは、SNSを検索エンジンのように使って自分で探す。このどちらにおいても、勝つのは“正しい(=刺さる)”コンテンツです」。

Jerne社CEOで「PhocusWire Hot 25 Travel Startups 2024」にも選ばれたTim Morganは、この概念を少し違った視点で捉えている。彼によれば、「インタレストメディア」は“プッシュ型”であり、従来の「ソーシャルメディア」は“プル型”だという。「結局のところ、ブランドがやるべきことは、どんな戦略でも構わないから、とにかく“ノイズを切り抜けて消費者に届く”方法に集中することです」とMorgan。

「インタレストメディア」が他のプッシュ型戦略と違うのは、「ブランド側が各プラットフォームのアルゴリズムをコントロールできない点」にある。それがポジティブに働く場合もあれば、逆の結果になることもある。

 

インタレストメディアの起源 The origins of interest media

業界関係者によると、「インタレストメディア」の時代はTikTokの登場とともに台頭した。

TourRadarの共同創業者兼CEOのTravis Pittmanは、「SNSは、友人とのつながりをベースにした投稿のやりとりから、アルゴリズムが拾った“あなたの興味”に沿って深掘りされる世界へと変化した」と語る。同社は最近「Moments」機能を開始し、リール動画や写真から直接予約できる仕組みを提供している。

TikTokでは、フォロワーがほとんどいない新規ユーザーでも、内容が良ければ100万回以上再生されることがある、とWaliszewskiは述べる。一方Instagramは、興味ベースのコンテンツを重視し始めてはいるものの、依然として「フォロワー数」に重きを置いているという。

TourRadarでグローバルブランド責任者を務めるAizaz Sheikhは、「インタレストメディア」は実際にはTumblr時代から存在していたと語る。

「これは初めての概念じゃありません。Tumblrは、興味関心やそこから形成されたコミュニティ中心のSNSでした。FacebookやTwitter、Instagramとは根本的に違っていたのです」。

Morganと同様、Sheikhも「コミュニティベースのSNSは死んでいない」と考えているが、個々の興味関心の方が注目を集めやすい時代になっていると指摘する。興味関心こそが「人とのつながりの場」だというわけだ。

「友人や知人が必ずしも自分の趣味と一致するわけじゃない。でも“ひとり旅が好き”とか“マウンテンバイクが好き”とか“セーリングが大好き”といった趣味嗜好は、強く人を引き寄せる」とPittmanは言う。これは、大きな予算を持たない中小のクリエイターにもチャンスを与えることになる。

 

旅行会社はどう活用すべきか? How can travel companies tap in?

以前はInstagramなどのSNSにおいて「フォロワー数」が成功の指標だったが、Vaynerchukは「今やそれは通用しない」と言う。「私が15年かけて築いてきたフォロワーたちは、今やどんどん重要でなくなっています」。

Waliszewskiも「今は“ビュー(視聴数)”が最重要」だと強調する。それがブランドやクリエイターの“実際のリーチ力”を示すからだ。「かつては、フォロワーを増やすことでビューを得ていた。でも今は逆。まずビューがあり、内容が響けば、そこからフォロワーがついてくる」と彼は言う。

Pittmanも「刺さるコンテンツに正しいハッシュタグがあれば、アルゴリズムが自然と新しい視聴者に届けてくれる」と述べている。

「もしフォロワーがいないなら、気にする必要はない。逆に、フォロワーが多い人も、それに執着すべきではない」とWaliszewskiは言う。

大切なのは、「誰に届けたいか」を明確にし、「そのターゲットに響くと思われるコンテンツ」を投稿することだ。「結局は、役に立つ投稿をどれだけ多く作れるか、なんです。“保存したくなる” “シェアしたくなる” “コメントしたくなる” そんな投稿を増やすこと。それが肝です」。

その意識があれば、アルゴリズムは報いてくれる可能性が高い。

Morganも「InstagramやTikTokなどのプラットフォームは、今後さらに“インタレストメディア”を優先する方向にアルゴリズムを調整していくだろう」とし、ブランドは「バズる投稿を予測できないように、アルゴリズムも制御できない」と警告する。

ブランドにとっての最善の策は、「自社コンテンツと提携クリエイターによる投稿の“品質レベル”を一致させること」だという。「最終的に人々が信頼するのは、アルゴリズムではなく“人”です。だからこそ、ブランドにとっては信頼できるクリエイターとの連携が重要なのです」。

 

旅行者の関心を引くには?

HolidayPiratesの共同創業者兼CEOであるDavid Armstrongは「旅行者の関心を引くには、その地域で何がトレンドか、ニュースなども含めた幅広い文脈の理解が重要だ」と述べる。「旅行トレンドだけでなく、ニュースや話題も活用して、どう人々を引きつけるか。それを理解しているかどうかが非常に大事」。

ソーシャルでコミュニティ的な側面も依然として重要である。

Morganは、「この次のSNS時代で成功する旅行ブランドは、“コミュニティ重視のクリエイター”を優先するだろう」と言う。「AIが日常生活にますます浸透する中で、人々は“プッシュ型”の情報発信よりも、信頼できる“プル型”=自分の属するコミュニティ内の声により注目するようになる」。

 

今後、SNSはどこへ向かうのか? Where does social media go from here?

WaliszewskiとArmstrongの両者は、ソーシャルメディアは今後さらに強力になり、より重要になると見ている。特にヴェイナーチャックが語る“次の章”においてはなおさらだ。

「もうソーシャルメディアを“メディアそのもの”と考えなければいけません」とWaliszewski。「人々は毎日2時間半近くSNSに時間を使っています。誰も検索結果の青いリンクを延々と読むなんて望んでいません。動画を見たいんです。そこにすべての注目が集まっています」。

Armstrongも「今やSNSの重要性はますます高まっている」と断言し、「Instagramの投稿がGoogle検索にインデックスされるようになるなど、最新の変化に乗れているブランドは勝者になる」と述べた。

「今の大規模言語モデル(LLM)も、Instagram上の情報を活用している。Instagramに多くの良質なコンテンツを蓄積し、“ブランドとしての権威”を築いている企業は、これから有利な立場に立つでしょう」。

結論:旅行業界は“目を覚ませ”。Waliszewskiは、「旅行業界はSNS活用において、他業界よりも遅れている」と警鐘を鳴らす。「いま注目が集まっているのはここ(SNS)だ。そして、これからの商取引もどんどんここに移っていく」。

(7/31 https://www.phocuswire.com/interest-media-rise-travel-social-media-tiktok-instagram?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=Daily&oly_enc_id=9229H9640090J9N )

【出典:Phocuswire   翻訳記事提供:​業界研究 世界の旅行産業

 
 
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