【日本政府観光局インバウンド最新リポート 122】フランスの若年層 アニメが日本への扉に JNTOパリ事務所 石塚亘次長


 「アニメを見て、日本に行くことが夢だった」。そんな声がフランスの若年層の間で珍しくなくなっている。2024年に日本を訪れたフランス人は約38・5万人。そのうち約40%を20~34歳の若年層が占め、この層の2023年と比較した伸び率は約46%と、その他の年齢層を含めた全体の伸び率(約39%)よりも大きい(年代別の比率は出入国管理統計の数値を援用)。アニメや漫画をきっかけに日本文化に魅了され、日本を訪れる。こうしたポップカルチャーを通じた観光の流れが、フランスの若年層の中で広がっている。

 フランスでは欧州最大級のポップカルチャーイベント「Japan Expo Paris」が毎年開催され、例年、4日間で延べ約20万人が来場している。来場者の平均年齢は26・9歳であり、多くの若年層が集まるイベントである。また、フランスの漫画市場は日本に次いで2番目に大きいとされており、動画配信サービス等を通じて日常的にアニメに触れる若年層も多い。彼らにとって日本のアニメや漫画は、主要な娯楽として日常生活に根付いており、その延長線上に日本への旅の憧れがある。

 日本政府観光局(JNTO)パリ事務所は、2024年の「Japan Expo Paris」に出展し、会場内で372名にアンケート調査を実施した。その結果、アニメや漫画がきっかけで日本に行きたいと思った人は全体の78%を占めることが分かった。特にスタジオジブリ作品や『君の名は。』は、日本に行きたいと思わせる作品の代表例である。

 同調査で、興味のあるポップカルチャー体験を聞いたところ、「聖地巡礼」が最も高く(約34%)、次いで「アニメ・漫画関連テーマパークへの訪問」(約33%)が選ばれた。一方で、「ポップカルチャー体験は訪日動機とならない」との回答も約38%あり、たとえ日本に興味を持ったきっかけがアニメ・漫画だとしても、実際の訪日の際には、より多様な日本の魅力を味わいたいと考えている人もいることが分かった。つまり、フランスの若年層の中には、ポップカルチャーを入り口に日本の文化への関心を深めていく層がある一方、伝統的な街並みや寺社、文化体験等、ポップカルチャーの根底にある「本物の日本」を求める若年層も少なくない。

 続いて、同調査で「今後日本に行く予定がある」と答えた人は72.8%、そのうち40%は訪日経験者であることが分かった。なかには、すでに5回以上訪日したことがあると回答した人もいた。つまり、このポップカルチャーに興味のある層は一度限りの観光客ではなく、将来的にリピーターとなる可能性が高いと考えられる。若い頃の訪日体験が親近感や信頼感を育み、将来、パートナーや家族と再訪する動機となる例も多い。若年層にとって、訪日旅行の予算を工面するのは簡単ではない。何年もかけて資金をため、日本について情報を集め、時間を工面して、夢見てきた日本にようやく足を運んだ若者たちを、日本の皆さまにはぜひあたたかく迎え入れていただきたい。

欧州最大級のポップカルチャーイベント「Japan Expo Paris」のJNTOブース
欧州最大級のポップカルチャーイベント「Japan Expo Paris」のJNTOブース

 
 
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