
雄大な由布岳が望める露天風呂(山のホテル夢想園)
日本各地に点在する温泉地は、長い年月をかけて人々の心と体を癒やしてきた。自然環境や泉質、歴史、地域文化といった多様な要素が織りなす温泉の魅力は、今もなお、進化を続けている。今回は、注目すべき話題の11温泉地のそれぞれの特色と旬の情報を紹介する。
足湯が名物「由布院駅」が開業100周年
大分空港から車で約1時間、大分県の中央部に位置する由布院温泉は、豊後富士の愛称で親しまれる「由布岳」の麓に広がる自然豊かな温泉地。標高約500メートルの高地にあることから避暑地としても人気が高く、環境省の国民保養温泉地に指定されている。約850の源泉数、毎分3万8500リットルの湧出量共に全国2位と豊富な湯量を誇るため、温泉宿が密集する必要がなく、ゆったりと落ち着いた町の雰囲気に魅了される人も多いだろう。
雄大な由布岳が望める露天風呂(山のホテル夢想園)
泉質は単純温泉(アルカリ性含む)。単純温泉は刺激が少なく、お湯にくせがないため、子どもから高齢者まで幅広い年齢の人や、敏感肌の人も安心して入浴できる。中でもpH8.5以上のアルカリ性単純温泉は、保湿効果が期待できるメタケイ酸が豊富で、なめらかな湯触りが特徴の美肌の湯としても知られている。
多くの温泉宿が露天風呂付きで、風呂から自然を眺めるのが由布院温泉ならではの楽しみ方。晴れた日に望む雄大な由布岳、秋冬の早朝に浮かぶ濃い朝霧など、自然や季節の移ろいを間近で感じることができる。
由布院の玄関口、JR九州久大本線の由布院駅が今年で開業100周年を迎えた。1925年に北由布駅として開業。45年の太平洋戦争下の空襲により全焼したが、再建、改築を経て、90年に現在の駅舎が完成した。
ゆとりある開放的な空間を生む由布院駅
駅舎は大分出身の建築家・磯崎新氏が設計。杉材を用いた木造建築で、高さ12メートルの吹き抜けロビーや、改札口を設けない開放的な空間がゆとりと癒やしをもたらす。駅を出ると正面にそびえる由布岳が駅に降り立つ人々を出迎える。
大分方面行き1番乗り場ホームに設置された人気の足湯は、窓口で足湯券(200円、特製タオル付き)を購入して利用可能。ホームに入る電車を眺めながら浸かることができるのも由布院駅ならではの魅力だ。
由布院盆地を舞台に開かれる夏の二大イベントも50周年を迎えた。国内外から著名な演奏家を迎え、室内楽の演奏会を楽しむ「ゆふいん音楽祭」(7月26、27日)は、25日に前夜祭として親子向けコンサートを開催。8月21~24日に開かれる「湯布院映画祭」は、日本最古の映画祭で、夜空の下で楽しむ野外上映が見どころだ。
節目の年を迎えた今、由布院の自然と文化に触れに、足を運んでみては。
■由布院温泉観光協会TEL0977(85)4464。