25年4月、新社長に就任 三井不動産ホテルマネジメント代表取締役社長・杉山亮氏に聞く


人が人を呼ぶホテルに 従業員満足度向上が成長の鍵

 ――今年4月1日付で新社長に就任された。簡単なご経歴と新社長としての抱負を。

 「1991年に三井不動産に入社し、2000年からホテル事業に携わることになった。当時は、総合型と宿泊主体型ホテルが混在したホテルチェーンだったが、宿泊主体型ホテルチェーンへの再編を推進した。その後、三井ガーデンホテル銀座プレミア、三井ガーデンホテル汐留イタリア街などの新規開業に携わった。06年から14年まで三井不動産の人事部やららぽーとなどの商業施設のテナント営業を経験。15年に三井不動産ホテルマネジメントに出向し、16年から20年の5年間で21ホテルを新規開業させるため、人財の確保に奔走した。20年はコロナ禍と重なってしまい、休業と再開業、従業員の雇用と処遇の確保に追われた。21年に商業施設部門に異動。25年4月に三井不動産ホテルマネジメント代表取締役社長に就任した」

 「社長としての抱負は、当社の強みである『人財』を大切にし、スタッフが気持ちよく働ける環境をつくること。スタッフが自分の仕事に誇りを持ち、会社をさらに好きになってもらうことが最も重要だと考えている。コロナ禍を経て、スタッフ一人一人が非常に鍛えられたと感じている。彼らと共に会社をさらに発展させていきたい。『人が人を呼ぶホテル、人が人を呼ぶ会社』をスローガンに掲げ、従業員満足度(ES)を高めることで、会社全体をもう一段上のステージへと引き上げていく」

 ――コロナ禍の苦境からの劇的なV字回復、過去最高益を達成された雀部社長が会長に上がられての登板だ。また、昨年6月からは三井不動産の菰田会長が日本観光振興協会の会長を務められている。貴社の動向は特に観光業界内で注目されている。

 「特にこの2~3年の業績回復はすさまじく、その中で後任を任された。雀部会長が築かれた強固な組織、運営力、営業力をしっかりと引き継ぎ、さらに発展させていくことが私の使命だと考えている。ホテル業界は常に変化にさらされており、業績が好調なときもあれば、不調なときもあり、短期間でマーケットは目まぐるしく変化する。この変化に柔軟に対応していくことが非常に重要だ。スタッフ一人一人が能動的に考え、行動できるような会社にしていきたい。そのためにもスタッフのロイヤリティ向上に注力していく」

 ――ホテル業界は人手不足が深刻だ。ただ貴社の場合、新卒採用では三井不動産グループのブランド力が、清掃やFB(飲食)などの協力会社とは時間をかけて丁寧に築き上げてきた信頼関係が、人材確保に有利に働いているように見える。

 「新卒採用の応募者は年々増加している。25年は前年比で2割以上増えた。中途採用も活発に行っており、数多くの方々にご応募いただいている。確かに三井不動産のブランド力や協力会社との信頼関係は、人材確保において有利に働いている。しかし、それ以上に大切だと考えているのが、スタッフに自社を好きになってもらうことだ。そのための取り組みの一つとして、バックオフィスの環境整備を進めている。昨年、モデルケースとして仙台と京都のホテルで、スタッフ全員参加型でのバックオフィス改修を実施した。元々客室だったスペースをデザイン性の高い休憩室にするなど、スタッフが快適に過ごせるような工夫を凝らしている。この取り組みは今後3年間で全ホテルに展開していく計画だ。給与や処遇の改善にも取り組んでおり、スタッフのロイヤリティ向上につながっている。スタッフが良い情報を発信してくれることが、新卒採用の応募者増にもつながっているのだと思う」

 ――マリオット、IHGなどのグローバルブランドがロイヤリティプログラムの集客力を武器に日本国内でFC・MCを拡大している。

 「外資系ブランドの送客力には確かに一日の長がある。当社では21年4月から『MGHリワーズクラブ』を開始し、現在会員数は100万人を超えるまでに成長し、毎月1万人ペースで増加している。外国人会員比率も15%と高く、特に台湾の方が多い。AI技術の活用も視野に入れている。検索エンジンやAIとの関係構築は今後のロイヤリティプログラムの競争においても極めて重要だ」

杉山 亮氏(すぎやま・あきら)1991年に熊本大学法学部を卒業し、三井不動産に入社。情報システム部、九州支店を経て2000年からホテル事業に従事。15年三井不動産ホテルマネジメント取締役管理本部長(総務人事部長を兼任)、17年同社常務取締役管理本部長(同)。21年4月に三井不動産商業施設本部商業施設営業一部長として異動。25年4月、三井不動産ホテルマネジメント代表取締役社長に就任。

【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

杉山亮氏
杉山亮氏

 
 
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