
花火大会のフィナーレを飾る「大空中ナイアガラ」
日本各地に点在する温泉地は、長い年月をかけて人々の心と体を癒やしてきた。自然環境や泉質、歴史、地域文化といった多様な要素が織りなす温泉の魅力は、今もなお、進化を続けている。今回は、注目すべき話題の11温泉地のそれぞれの特色と旬の情報を紹介する。
七湯巡りと花火に癒やされて 観光の魅力凝縮
食べて、見て、つかって―。食と自然、文化、温泉など観光の醍醐味(だいごみ)が凝縮された静岡県・熱海温泉。都心から最速で約30分という好立地にありながら、その歴史は1200年以上に及ぶ。奈良時代、僧・万巻上人が海中の温泉脈を「大湯間歇泉(かんげつせん)」に移し、誰もが入浴できるようにしたことから始まり、以来、徳川家康など多くの武家からも愛され続けてきた名湯だ。
1200年以上の歴史を誇る温泉地、熱海市
温泉は毎分約1万6600リットルと豊富な湧出量を誇り、泉質は約7割を占める塩化物泉と、硫酸塩泉、単純温泉(アルカリ性含む)の3種類。肌を引き締め、痩身(そうしん)効果が期待できるほか、市内の源泉のほとんどが弱アルカリ性のためやわらかな湯あたりで、美人の湯ともいわれている。
熱海温泉の歴史を語るうえで欠かせないのが、市内に点在する七つの源泉群「熱海七湯」。かつては地上一面に自噴していたと伝えられているが、自然災害の影響で湧出場所は限られ、現在は人工的に噴出させて当時の様子を再現している。市の指定文化財「大湯間歇泉」や、温泉卵を作ることができる「小沢の湯(平左衛門の湯)」など、立ち上る湯けむりが風情を感じさせ、押印帳を片手にゆっくりと巡ることができる。
熱海七湯の一つ「大湯間歇泉」
街歩きの合間には、地元スイーツも味わいたい。熱海駅前にある各商店街では、レトロな牛乳びんが目をひく「熱海プリン」をはじめ、老舗和菓子屋・又一庵が手掛ける「熱海ばたーあん」、古屋旅館が和栗専門店と共同開発した「生糸モンブラン」など、熱海でしか味わえない品々が並ぶ。これらを目当てに訪れる観光客もいるほどで、温泉と並ぶ熱海観光の魅力の一つとなっている。
熱海湾での恒例行事「熱海海上花火大会」は、夏のみならず四季を通じて開催(今年は17回)。三方を山に囲まれたすり鉢状の地形のため、海上で打ち上げられた花火の音が反響し、巨大なコンサートホールのような音響効果を生む。夜空を彩る大輪の花火、水面に映る光、そしてフィナーレを飾る「大空中ナイアガラ」は、まばたきを忘れるほど圧巻の光景だ。観賞後は個人から団体まで幅広く対応する多彩な温泉宿で、癒やしのひとときを過ごしてみては。
花火大会のフィナーレを飾る「大空中ナイアガラ」
■熱海観光局TEL0557(29)6434。