
意見交換会の様子
蔵王温泉にかつてのような国内スキー客を取り戻そうと、山形市観光協会は7月14日、「蔵王温泉・蔵王温泉スキー場プロモーション・意見交換会」を東京都千代田区の都道府県会館で開いた。旅行会社13社から22人が参加。蔵王温泉側は、蔵王温泉観光協会、蔵王索道協会、DMC蔵王温泉ツーリズムコミッティ、観光創造ファクトリー、山形市、山形県東京事務所、山形市観光協会から14人が参加した。
意見交換会の様子
国内客と外国人客のバランス模索
蔵王温泉旅館組合長でDMC蔵王温泉ツーリズムコミッティ代表取締役の岡崎彌平治氏は「ここ数年、蔵王温泉スキー場の冬は大変多くのお客様にお越しいただき、2年間活況で元気な町になってきた」と現状を説明した。
ただ、蔵王温泉スキー場の入込客数は、ピーク時の2000年代初頭には年間約100万〜150万人を数えたが、スキー人口の減少とコロナ禍により一時は20万人を切る状況まで落ち込んだ。しかし、昨シーズンは40万人強まで回復。ただその半数約20万人は外国人客だという。
岡崎氏は「各旅館とも海外のお客様の予約は非常に早い時期に入る。そうすると国内のお客様はなかなか部屋が取れず、結局お部屋がなくて皆様からの商品を受け入れられない状況が続いている」と説明。「旅館組合の会員からも『海外のお客様だけを取っていて、この先何かあった時にこれでいいんだろうか』という声が上がっている」と現場の懸念を紹介した。
「宿泊の選択肢を増やしたい」旅行会社の声
意見交換会では、旅行各社からスキーツアー造成に関する要望が相次いだ。
オリオンツアーの担当者は「宿泊の方が近年増えにくくなっている。ロッジや民宿の情報をまとめて提供いただけると助かる」と提案。また「蔵王の中で泊まれなくなっている日は山形市内でも利用が可能なのか」と質問した。
クラブツーリズムからは「旅館さん、ホテルさん、ロッジさんを含めて宿泊の選択肢を増やしていきたい。ロッジの貸切などはできるのか」との質問があった。スノーシューツアーや雪山登山の企画も検討していると話した。
東武トップツアーズの担当者は「昨シーズンは全国的に雪が多かったが、蔵王をはじめ東北エリアはインバウンドで早く部屋が埋まってしまう状況で、対前年で80%の実績だった」と報告。「インバウンドだけでなく国内の方も力を入れていくという具体的な取り組みを聞きたい」と要望した。
JTBガイアレックからは「仙台駅から蔵王温泉への直行バスの新路線開設」の提案もあった。「バス利用によって駐車場の混雑緩和にもつながるのではないか」と利点も説明した。
受け入れ側の対応策
これらの要望に対し、岡崎氏は「ロッジや民宿タイプは、最近食事を出さないところも増えている。温泉街のレストランで食事をとるスタイルも可能」と説明。ロッジの貸切については「20〜30人規模なら可能」とした。
また「蔵王以外に宿泊して蔵王でスキーする商品も検討する」と前向きな姿勢を示した。バス路線の新設については「宮城交通、山交バスともに増便は厳しい状況」と説明したが、代替案として「仙台駅から山形駅までは1時間に3〜4便出ており、その後蔵王線行きバスも1時間に1本あるので、それを利用いただける」と提案した。
リフト券については、蔵王温泉索道協会事務局の後藤純一次長が「大人1日券のシーズナリティが細かくなる」と説明。12月〜3月の期間を細分化し、12月20日から3月1日までの繁忙期は窓口価格8,000〜8,500円に対し、旅行会社向け提供価格は6,700円と大幅割引を維持する方針を示した。
「3拍子そろったリゾート」を強調
岡崎氏は最後に「日本のリゾートは、スキー場は良いけど温泉がない、温泉もスキー場も有名だが山として有名でないなどとなりがちだが、蔵王は山としても有名、温泉としても有名、スキー場としても有名。3拍子揃ったマウンテンリゾートだ」と蔵王温泉の強みを強調した。
さらに「12月から場合によっては5月まで、上の方は全国や世界にアピールできる素晴らしいスキー場だ」と述べ、「国内外に誇れる蔵王のスキー場をさらに多くの日本人に知って、楽しんでいただきたい」と呼びかけた。
山形市商工観光部の高橋大部長も「山形市は今年度から経営計画が新しくなり、特にこの5年間は観光に力を入れていく。全国各地にスキー場はあるが、蔵王温泉スキー場ほどバリエーションが多いゲレンデがあるスキー場はない。スキーだけでなく温泉に恵まれ、世界でも珍しい樹氷も鑑賞できる」と多様な魅力をアピールした。
今回の意見交換会に参加した旅行会社は、オリオンツアー、クラブツーリズム、東武トップツアーズ、JTBガイアレック、ビッグホリデー、ジャルパック、ANA X、JR東日本びゅうツーリズム&セールス、T-LIFEホールディングス、阪急交通社、近畿日本ツーリストブループラネット、近畿日本ツ―リスト、読売旅行の13社。
【kankokeizai.com編集長 江口英一】