
北海道の代表銘菓の一つ
北海道中南部、苫小牧市周辺に広がる勇払(ゆうふつ)原野には、古くから大人の小指の先ほどの大きさの青紫色の実をつけるハスカップが自生していた。
7月が収穫期で、多くの地元民が容器を抱えて摘み取りに出かけた。酸味が強いので、自家で砂糖やハチミツを加えたり、ジャムにしたりして食べた。
これを最初に菓子に用いたのは、1933年、苫小牧市の沼の端駅で近藤待合が立ち売りした「ハスカップ羊羹(ようかん)」といわれている。
その20年後に苫小牧駅前の「三星(みつぼし)」初代社長が、これぞ苫小牧銘菓を、と取り組んだのがハスカップジャムをたっぷり使った「よいとまけ」。鶏卵をいっぱいに使ったふんわりしたカステラ生地にハスカップジャムを塗って巻き込んだおいしいロールケーキである。
形は紙の原材料の丸太、菓名は丸太を積み下ろす作業の「よいとォまいたァ」の掛け声から付けた。
北海道の代表銘菓の一つ
ジャムはオブラートで包んであるが手にするとべとべと。以前は自分でカットしたので「日本一食べにくいお菓子」と紹介。それでかえって大ブレークした。
ハスカップはシベリア東部、モンゴル、サハリンなど寒冷地で生育。北海道でも先住のアイヌの人たちが「ハシカプ」(枝の上にたくさんなるもの)の名で好んだという。
今は自生でなく千歳や厚真、美唄、上富良野などの栽培が主力。舌先にツンと走る酸味が甘味にアクセントをつけておいしい。
遠い昔、シベリアからオオハクチョウが勇払原野に飛来。種が運ばれてきたという説もある。
ハスカップは熟するとほろっと外れ、皮が軟らかで潰れやすい。酸味が強いが、カルシウム、鉄分、ビタミンC、食物繊維などブルーベリーの3~4倍もある。
このハスカップジャムと特製バタークリームを薄焼きクッキーでサンドし、チョコレートで縁取りした千歳市・もりもとの「ハスカップジュエリー」も人気の銘菓である。
ハスカップジュエリー
新千歳空港に離着陸するキャビンアテンダント(客室乗務員)の口コミで広がった。クリーミーな甘さの中にツンと響く酸味がおいしさを一段と高める。
(紀行作家)
【メモ】「よいとまけ」=三星(0120・333・153)1箱税込み780円、「ハスカップジュエリー」=もりもと(0123・26・0218)1箱4個入り税込み1280円~。取り寄せ可。
(観光経済新聞25年7月14日号掲載コラム)