
鉄輪温泉の「蒸し料理」。温泉や地獄めぐりの後に楽しみたい絶品グルメの一つだ
日本各地に点在する温泉地は、長い年月をかけて人々の心と体を癒やしてきた。自然環境や泉質、歴史、地域文化といった多様な要素が織りなす温泉の魅力は、今もなお、進化を続けている。今回は、注目すべき話題の11温泉地のそれぞれの特色と旬の情報を紹介する。
食べて、寝て―「地獄蒸し」を堪能
大分県の別府八湯は、2024年度「にっぽんの温泉100選」で4位にランクインした九州の人気温泉地。日本有数の源泉数と湧出量を誇り、「別府」「浜脇」「亀川」「鉄輪(かんなわ)」「観海寺」「堀田」「紫石(しばせき)」「明礬(みょうばん)」の8温泉を擁する。泉質や風情の異なるさまざまな温泉を楽しめることから、多くの来訪者を癒やしてきた歴史を持つ。古いものでは8世紀初頭から歴史の舞台に登場する温泉もある。
別府八湯といえば、歴史が詰まった観光地を巡る「べっぷ地獄めぐり」が有名だ。中でも「海地獄」「血の池地獄」「龍巻地獄」「白池地獄」は、国指定名勝にも登録されている。
べっぷ地獄めぐりは2時間半ほどですべて回ることができる。午前中に一通り歩いた後、噴気で蒸した鉄輪温泉の名物「地獄蒸し」をいただくのも良いだろう。別府市では、この地獄蒸し料理を「食べる温泉」と紹介しており、そのインパクトやヘルシーさから定番の人気グルメとなっている。
使う食材は、魚介類や肉類、野菜など。蒸し方はとてもシンプルで、食材を釜に入れてふたをし、ころ合いを見て食材を取り出す。好みの調味料をかけて食べると、うま味が凝縮された特別な風味を楽しめる。地獄蒸し体験は「地獄蒸し工房鉄輪」、「二彩乃湯宿アサヒヤ」「森藩別邸」といった宿泊施設や、湯治屋(貸間)でも提供している。
鉄輪温泉の「蒸し料理」。温泉や地獄めぐりの後に楽しみたい絶品グルメの一つだ
鉄輪温泉では、日本古来の「蒸し風呂」を体験することも可能だ。その入浴スタイルは通常のサウナとは異なり、噴気で温められた石室に敷き詰められている薬草の上に横たわる。この薬草は石菖(せきしょう)と呼ばれ、じんわり温まることで冷え性や美肌にも効果があるといわれている。
日本古来の「蒸し風呂」
別府市は伝統工芸文化も根付いている。「別府竹細工」は1世紀に起源を持つほどの長い歴史があり、1979年には国の伝統工芸品に指定されている。竹細工は蒸し料理の飯カゴや弁当箱で使われるほか、バッグや竹のアクセサリーなどのファッションアイテムにもなる。別府市竹細工伝統産業会館や別府駅構内など、街歩きをしながら気に入った竹細工のアイテムを入手できるスポットも多数点在する。
長い歴史を持つ竹細工