
インバウンドだけでなく、国内にもさまざまな食の禁忌を抱えた在日外国人が増えている
近年、日本における在留外国人の増加は、単なるインバウンド観光の枠を超え、日本に定住する「在日外国人」への対応へと焦点が移っています。厚生労働省の統計によると、「父母の一方が外国籍である子」の出生数は近年、年間1万6千人台で推移し、確実に増えています。これは、欧米では一般的ですが、日本のような国では新しい現象です。従来の「ハーフ」ではなく、「MIX」と呼ばれる人口の増加は顕著で、サッカー、バスケットボール、陸上などの高校全国大会や日本代表クラスでも、多くのMIXの方々が活躍しています。
このような社会の変化に伴い、食の多様性への対応も、インバウンド向けではなく、日本に暮らす「リビング・ムスリム」のための対応が求められています。
その中でも、特に顕著なのが、給食や修学旅行における食の対応です。
給食では、茨城県の境町と五霞町がハラールフードの提供を開始しましたが、現状では多くのムスリムの子供たちがお弁当を持参しています。
さらに大きな課題は、修学旅行や林間学校です。宿泊施設が対応しないと、ムスリムの子供たちは貴重な思い出となる旅行に参加できない事態が生じます。日光の旅館が修学旅行のムスリム学生受け入れに動いた例もあるように、保護者からの切実な声が背景にあります。これはムスリムだけでなく、アレルギーを持つ子供たちにも共通する課題であり、宿泊施設が分け隔てなく子供たちを受け入れるための大きなハードルとなっています。
こうした課題に対し、近年では解決に向けたサービスも登場しています。協議会のパートナーであるアレルギー対応サービス会社、CAN EATは、2025年4月21日、東武トップツアーズに「アレルギーヒアリングシステム」を導入し、年間約60校の修学旅行でアレルギー対応を効率化しています。
このように、DX(デジタルトランスフォーメーション)も活用した食の多様性対応が少しずつ動き始めています。
インバウンドだけでなく、国内にもさまざまな食の禁忌を抱えた在日外国人が増えている
(メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長)