
眼前に広がる海を眺めながら
日本各地に点在する温泉地は、長い年月をかけて人々の心と体を癒やしてきた。自然環境や泉質、歴史、地域文化といった多様な要素が織りなす温泉の魅力は、今もなお、進化を続けている。今回は、注目すべき話題の11温泉地のそれぞれの特色と旬の情報を紹介する。
砂むし温泉と南国の味覚を堪能
鹿児島県・指宿市にある指宿温泉は前回の38回「にっぽんの温泉100選」で7位に選ばれた。
指宿温泉で最も有名なのが「砂むし温泉」だろう。海岸に湧出する温泉で温められた砂浜に入浴するスタイルは、美容・健康面で通常の温泉につかるよりも効果があるといわれている。天然の砂むし温泉は世界的にも非常に珍しく、国内で天然の砂むし温泉を楽しめるのは指宿温泉だけ。そのため国内から多くの観光客が訪れている。
眼前に広がる海を眺めながら
指宿市には豊かな自然を堪能しながら砂むし温泉を楽しめる施設が充実している。
昨年12月に営業を再開した「山川砂むし温泉 砂湯里」は、東シナ海を眼前に臨む絶好のロケーションに人気が集まる砂むし温泉だ。波の音に癒やされながら極上のデトックス体験を味わえることで地元民に長年愛されてきた。その魅力が広まり、今では海外からの観光客もかなり増えたという。
砂むし温泉と同様に有名なのが、指宿温泉で唯一の単純硫黄泉「区営鰻温泉」だ。神秘的な火口湖・鰻池のほとりに位置する鰻温泉は、幕末の武士・西郷隆盛も湯治に訪れていた由緒ある温泉で、四方を山に囲まれた静かなたたずまいが訪れる人の心を包みこむ。周辺には昔ながらの景観が今も残り、街の至るところから温泉の蒸気が立ち上る光景は、日々の喧騒を忘れさせてくれる。
歴史ある街並みを散策しながら地元の料理を楽しめるのも指宿温泉の魅力の一つ。そんな楽しみを満たすのにピッタリな「レトロピカルメニュー」は今年6月に誕生した新たなご当地グルメだ。
その名の通り、昔懐かしいレトロメニューと南国情緒を感じられるトロピカルメニュー、その両者の魅力を掛け合わせて考案されたものがレトロピカルメニューで、市内の飲食店26店舗が参加している。どれも1年の歳月をかけて作り上げた逸品で、食材には必ず指宿市内の農水産物や加工品が使われている。
指宿産最高級の本枯れ節のうまみが凝縮したラーメン「黒豚レトロピカル肉肉盛り 本枯れ節添え」や、指宿産パッションフルーツをふんだんに使用した「レトロピカル豆乳ソフトフロート」など、湯上がりの体に染みわたるメニューも展開。
指宿産パッションフルーツをふんだんに使用した「レトロピカル豆乳ソフトフロート」
疲れた心と体を癒やしてくれる指宿温泉で、心地良い汗を流してみてはどうだろうか。