JATA、国内・海外・訪日など各分野の現状課題や今後の方針を発表


記者懇談会での会見の様子

記者懇談会での会見の様子

 日本旅行業協会(JATA)は4日、「2025年度JATA記者懇談会」を東京都千代田区のJATA研修室で開催した=写真。髙橋広行会長(JTB会長)をはじめ役員が出席。国内、海外、訪日旅行の課題や、人材確保・人材育成の今後の方針について発表した。

最大の課題は「海外との双方向交流」

 髙橋会長は冒頭、日本の観光業界が直面している最大の課題として、インバウンドとアウトバウンドの不均衡を指摘。2024年の訪日外国人旅行者数は過去最高の3687万人を記録した一方、日本人の出国者数は1300万人と19年比で65%にとどまっている。今年1月から5月の実績でも、訪日旅行客は前年同期比125%と拡大を続ける一方、日本人出国者数は同114%、19年比ではまだ69%程度にとどまっている状況を報告した。

 髙橋会長は「国際交流は双方向交流が基本。国は訪日旅行客6千万人を目指しているが、日本側の受け入れ体制の整備を進めるだけでは不十分。出国側、入国側双方に安定した需要がなければ成り立たない」と強調。パスポート保有率向上、若者の国際交流の促進、地方空港の国際化などが不可欠だとした。

【国内】市場は回復も取扱高は減少、「代売」からの脱却を

 小谷野悦光副会長(日本旅行会長)が現状について説明。24年はマーケット全体としては19年を超えた消費額となっているものの、JATA加盟の主要旅行会社43社の取扱高では、19年度の2兆5500億円に対して昨年度は2兆1700億円と85%にとどまっていると強調した。

 「マーケット全体が回復していても、残念ながら旅行会社を使う、もしくは選んでいただくところにまだまだしっかり向き合いきれていない」と現状認識を示した上で、「旅行業界全体として『代売』からの脱却、価値ある商品の企画・販売、地域の皆さまと連携した発着双方の視点での新たな需要創出が必要」と述べた。

【海外】レジャー市場に回復遅れ、海外事例の調査を開始

 続いて酒井淳副会長(阪急交通社社長)が説明。業務渡航はコロナ前の9割に戻っている一方、特にレジャー・観光に関しては19年比で53%と回復が遅れているとした。その要因として、航空仕入れ環境の変化や旅行代金の高騰、さらに旅行会社の人材不足といった内的要因もあると指摘。レジャー市場を中心とした募集型企画旅行の新たなタッチポイントを検討する場として、「海外旅行リエンジニアリングワーキンググループ(WG)」を立ち上げると報告した。海外諸国のアウトバウンド事例を調査・考察しながら、5~10年後の海外レジャー市場の環境を可視化する。

【訪日】オーバーツーリズムの解消や受け入れ環境の強化を

 訪日旅行推進委員会の百木田康二委員長(東武トップツアーズ社長)は、訪日外国人旅行者数が24年に3687万人を記録し、25年も1月から5月の累計で前年比20%以上上回っていると説明。「30年に政府目標の6千万人が達成できるペースだが、継続的に成長するためにはさまざまな問題の解決に取り組む必要がある」と指摘した。

 課題として、オーバーツーリズムの解消に向けた地方への誘客の推進、国内需要の分散、外国語ガイドやバスドライバーの不足などを挙げた。今年度の取り組みとして、農泊や国立公園への誘客を目指した農林水産省や環境省との協力、テーマ別セミナーの開催、地方自治体・海外業界団体との協力などを紹介した。

【人材確保・育成】学生に対し採用・教育活動を強化

 最後に原優二副会長(風の旅行社会長)は、人材の確保と育成について説明。「コロナ禍の3年間で多くの貴重な人材を失った」と述べ、JATA会員の従業員総数は現在約4万7千人で、19年の約7万人と比較して67%まで減少しているとした。

 その上で、「学生の旅行観光業界への関心は年々高まっている」と指摘。人材確保とともに、学生に業界の魅力発信を進めていると強調した。JATA会員各社が出資する株式会社ジャタにより、人材派遣会社と連携した経験者採用や、業界特化型の就職セミナー開催などの取り組みが行われていることを紹介。さらに大学との連携によるインターンシップや、早稲田大学との提携講座「ツーリズム産業論」などの教育活動についても説明した。

記者懇談会での会見の様子
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