地域で「温泉文化」学ぶ 三鷹国際交流協会 温泉家・北出氏が講演


北出氏

 地域住民を対象に「温泉文化」を学ぶ講座が5日、東京都三鷹市で開かれた。同市で国際交流活動を行う三鷹国際交流協会(MISHOP)が主催。杏林大学(同市)地域総合研究所の客員研究員で温泉家の北出恭子氏を講師に迎え、自身の研究成果やコンサルティング事例を交えながら、温泉の定義や効能などを分かりやすく解説した。参加した市民ら45人は熱心に耳を傾けていた。
 
 北出氏は、泉質の利き湯による調査・分析や、年間300回以上の入湯経験をもとに温泉研究を重ねており、温泉地づくりのコンサルティングを担うスプリングラボ合同会社のCEOも務める。
 
 講座では、温泉ができるメカニズムや定義など基礎知識を解説。中でも日本の温泉地は約2900カ所、源泉は2万8千カ所にのぼり、古くから温泉文化が根づく欧州のフランス(温泉地数約110カ所、泉源数700カ所)やドイツ(同約300カ所、同約2千カ所)と比べても圧倒的な数を誇ることを示し、「世界一の温泉大国」であることを強調した。
 
 温泉の効能にも触れた北出氏は、温泉水(源泉)にヨウ素を垂らすと色が消えるという自身の実験例を挙げ、湧き立ての新鮮な温泉がアンチエイジングに役立つことを説明。さらに、温泉入浴が主観的幸福感の向上に寄与することについても、国内外の研究結果をもとに温泉の幅広い効用を伝えた。
 
 湯治場として知られる熊本県・地獄温泉で、2016年の熊本地震で被災した旅館、青風荘の再建に携わった事例も紹介。混浴文化を守るために「湯あみ着」を導入し、宗教的背景やタトゥーのある観光客、LGBTQ、乳がん術後の人などへの配慮を通じ、多様性に対応した温泉の形を示した。
 
 「温泉は日本酒やワインのように五感で楽しんでほしい」と北出氏。色や香り、肌触りなど、多様な楽しみ方を提案したほか、「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録を目指す署名活動への協力も呼び掛けた。
 
 MISHOPは三鷹市民によるボランティア活動を通じて、国際交流や外国籍市民への支援を行う団体。市民が主体的に関わることで、国際化への理解と意識の向上を目指している。
 
 副理事長で杏林大学外国語学部長の坂本ロビン氏は、「今回で89回目を迎えるが、『温泉』をテーマにした講座は初の試み。日本文化への理解を地域の皆さんとともに深める機会になれば」と開催の意義を述べた。


北出氏

 
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