JATA SDGsアワード、大賞は近ツー 「オストメイトのための温泉日帰りツアー」 


会見に出席したJTBの山田さん(右)、トラベルハーモニーの三瓶さん(中央)、クラブツーリズムの鈴木さん(左)

経営、文化、環境など部門賞も選出

 日本旅行業協会(JATA)は6月27日、第3回「JATA SDGsアワード」の受賞者を発表した。今回の大賞には、近畿日本ツーリストの「『温泉を楽しみたい』をあきらめない!オストメイトのための温泉日帰りツアー ~障害者差別解消法の改正施行をきっかけに、誰もが旅を楽しめる社会の実現を目指して~」(社会経済部門優秀賞)が選出。同日に開かれた記者会見には、各部門の優秀賞を受賞した代表者が出席し、自社の取り組みを紹介した。

 今回の応募数は57件(25社)で、昨年の50件(18社)から増加。応募25社のうち14社が初参加で、大手旅行会社以外の会員による応募が全体の48%を占めた。今回は、「経営」「社会経済」「文化」「環境」の4部門を設定。応募数の増加を図るべく、今回から過去に応募した作品も進捗(しんちょく)が確認できるものは再応募可とした。部門ごとに「優秀賞」「特別賞」「奨励賞(複数点)」が用意され、各部門の最優秀作品となる「優秀賞」から、総合1位の「大賞」が選ばれる。

 今年大賞に輝いた近畿日本ツーリストの作品は、「温泉に入りたいが、周囲の目や設備の不備が不安」という悩みに応え、昨年4月の障害者差別解消法の改正施行を契機に、安心して温泉を楽しめるツアーを実現。ツアーでは、ホテルとの連携により、入浴時の装具隠しシールの活用や入浴環境の整備などを図った。ストーマ装具メーカーの工場見学も組み込み、参加者同士や生産者との交流の場も設けられた。

 ツアーを企画した事業推進本部ユニバーサルツーリズム推進担当の伴流高志さんは、「高齢者人口の加速的増加に伴い、内部障害者の増加が予想される。今後も社会に対して広く正しい理解と認知を目指していく」とコメントしている。

 経営部門の優秀賞は、JTBの「『クセモノを地域のタカラモノに』瀬戸内の新たな観光交流拠点:クセモノズ(SICSサステナブルラウンジ)の開業と、気候変動により生まれた社会課題を地域の宝に変えた地域を繋(つな)ぐストーリー」が受賞。老朽化が進行していた香川県高松市の中央卸売市場を舞台に、気候変動による漁獲量減少や魚種の変化といった地域課題を「旅の力」で解消する取り組みで、流通しづらい魚や野菜を「クセモノ」と捉え直し、これを地域資源=タカラモノとして活用する飲食店や交流スペースを開設。地元住民や子どもたち、観光客を巻き込んだイベントや商品開発(クセモノ食材を使ったレトルトカレーなど)を展開し、地域経済の活性化と持続可能な観光の両立を目指す。

 JTB高松支店の山田裕木さんは「市場が抱える社会課題を地域の宝に変換しようと、共通の課題を持つメンバーが集まり、自然と子どもたちを巻き込んだ取り組みを展開できたことが一番の成果」と語った。

 文化部門の優秀賞は、トラベルハーモニーの「撮影旅行から始めるサステナブルアクション」が受賞。写真家・山口規子氏と年2回の撮影旅行を実施し、単なる観光ではなく、地域の伝統工芸や文化、暮らしを深く知り、写真に残す体験を重視している。実際の事例として、香川県の伝統工芸「讃岐のり染め」の撮影、青森県での林業現場の見学といったプログラムを組成。参加者が地域の人々と交流しながら学びを深める。

 同社の三瓶眞紀さんは、同社の観光とSDGsをテーマにした情報発信サイトも紹介。「これからも地域の方々と交流を大切にしながら、旅を通じたサステナブルアクションを続けていきたい」と語った。

 環境部門の優秀賞は、クラブツーリズムの「中山間地の村をリジェネラティブ・ツーリズムでファンづくり!『旅するいきもの大学校!第1期~長野県生坂村』」。人口1700人弱の長野県生坂村で、全6回のプログラムを実施。生物多様性やネイチャーポジティブ(自然再生型観光)をテーマに、地域の自然資本を生かした新しいファンづくりを実践した。10代から60代まで約50人のコミュニティが形成され、参加者の中には、参加をきっかけに地域おこし協力隊として移住した人も現れた。

 同社の鈴木光希さんは「ありがたいことに第1期が好評だったので、第2期も準備している。引き続き、新しい形で地域にサステナブルかつユニークなコミュニティを作っていきたい」と述べた。

 記者会見に臨んだJATAの菅野貴総務部長は今回の応募数について、「応募は正会員全体のうち2%程度。まだまだ裾野を広げる余地がある」とコメント。「今後も情報発信や事例共有を通じて、業界全体の意識向上と実践を後押ししたい」と語った。 


会見に出席したJTBの山田さん(右)、トラベルハーモニーの三瓶さん(中央)、クラブツーリズムの鈴木さん(左)

 
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