
にぎわうホテル事業者のブース
まずは「食べきる」、食べ残しのない社会実現へ
ホテルや自治体、飲食店、大学などが連携し食べ残しの持ち帰りを推進しているmottECO(モッテコ)普及コンソーシアムは1日、ホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区)で啓発イベント「mottECO FESTA 2025」を開いた。飲食事業者や一般消費者など約600人が来場。パネルディスカッションや先進的な事例を紹介する展示ブースなどを通して事業者、消費者双方にモッテコの認知・普及を呼び掛けた。
同コンソーシアムは日本ホテルや城山観光、ホテル日航つくばなど9ホテルのほか、外食・食品事業者、自治体、大学など30団体(5月時点)が連携し、まだ食べられるにも関わらず捨てられている「食品ロス」削減に取り組む産官学民アライアンス。2020年度に環境省から食べきれない料理を自己責任で持ち帰ることを指す「モッテコ」=ロゴ=が発信されたことを受け、普及活動が始まった。
モッテコのロゴ
厚労省、消費者庁による講演では、6月27日に同庁などが発表した23年度の食品ロス量の推計値を紹介。その数は464万トン(前年度472万トン)で、そのうち食品関連事業者のロス量は231万トン(同236万トン)。中でも外食産業は66万トン(同60万トン)だった。コロナが明け、インバウンド需要もあり多少のリバウンドがあったものの、その半分は消費者による「食べ残し」との推計が出ているという。
また、政府は事業系・家庭系ともに食品ロス量を30年度までに00年度比で5割減を目標としていたが、事業系については22年度に早期達成したことから、新たに6割減の219万トンを目標に掲げている。
消費者庁消費者教育推進課食品ロス削減推進室の田中誠室長は、「この目標を達成するためには、食べ残しの持ち帰り促進が大きな柱なる」とモッテコの取り組みの可能性を強調。取り組みをさらに推進するため、厚労省と消費者庁が昨年12月に策定した「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」について、注意点やポイントなどを解説し、協力を訴えた。
田中室長
続くパネルディスカッションでは、コンソーシアムに参画するホテル、自治体などそれぞれの立場から取り組みの輪を広げる6人が登壇し、モッテコの普及拡大へ向けた取り組みや課題ついて議論を交わした。
城山観光(鹿児島市)は、これまで宴会場のみだったモッテコを、この7月からレストランでのアフタヌーンティーにも導入拡大。安川あかね企画広報部長は「簡単に始められたというわけでは決してなく、先駆けて実践されているホテルメトロポリタンエドモントの事例が役に立った。1千個以上の利用があるが、トラブルは全くない。われわれも実績を積み、安全性を発信することで(導入に)踏み込めない飲食業者への動機付けになれば」と呼び掛けた。
パネルディスカッションの様子(右から2番目が安川氏)
ファシリテーターを務めた同コンソーシアムの代表でセブン&アイ・フードシステムズ環境部会長の中上冨之氏は、「モッテコは『どうぞお持ち帰りください』ということではなく、『ぜひ食べきってください』ということ。目指すのはモッテコ運動をやらなくても誰も食べ残しをしない社会の実現だ」と、活動の存在意義を改めて述べた。
パネルディスカッションの様子(一番左が中上氏)
会場では、食品ロス削減に向けて先駆的な取り組みを行う五つのホテルをはじめ、43団体がブースを出展。一般消費者も含め、業界・業種の垣根を越えて活発な情報交換が行われた。
にぎわうホテル事業者のブース
モッテコの取り組みを体験できるコーナーも設置。来場者は、環境に配慮したFSC認証の持ち帰り専用容器に自らパンを詰めて持ち帰った。
来場者がモッテコを体験
コンソーシアム全体でのモッテコの取り組みや参画に関する問い合わせは、同コンソーシアム2025事務局メールinfo_motteco@koreyakono.jp。
廃棄食材で料理を提供
会場では、ホテル事業者の中でもモッテコを率先して推進しているホテルメトロポリタンエドモントの調理部が、通常であれば廃棄される食材を活用した「もったいないメニュー」を開発し、来場者に提供した。
料理は、バナナの皮を冷凍し、ナスのような見た目と食感に仕上げた「豚バラ肉で巻いたバナナの皮の甘辛チーズ焼き」=写真=や、宴会や婚礼の会食で提供されるパンの「ラスクショコラ」等、食材を余すことなく使った14品。特に米やパンといった正確な消費量の予測が難しく、売り切れることを前提としていない食材を活用した料理が多くみられ、来場者からは、通常の料理にも劣らないその出来栄えや味に高評価を得た。
豚バラ肉で巻いたバナナの皮の甘辛チーズ焼き
メニューを開発した同ホテルの岩崎均総料理長は、「要望があれば宴会のコース料理で提供することもあるが、これらはあくまでも廃棄食材が出たときに初めて作れる料理。『端材で作っているから原価が安い』と言われることもあるが、実際は一から作るのと同じくらい手間がかかっている」などと説明した。
説明する岩崎総料理長