
高価格かつ高品質な体験の消費は、18世紀から20世紀初頭にかけて、旅行エリートの間では既に一般化されたパターンである。大衆観光と比較してラグジュアリー観光が持つ差別的な特徴は、カスタマイズ(Customizing)にある。グローバル市場におけるラグジュアリー観光客の基準は、国別の家計所得上位5%以内の階層を対象としている。彼らは経験中心のラグジュアリー商品に価値消費を志向している。
ラグジュアリー消費者市場は伝統的な富裕層と新興富裕層に区分されるが、新興富裕層の市場規模と消費ポテンシャルは伝統的な富裕層よりも大きいことが分かった。特にこの層は伝統的な富裕層とは異なり、観光に関連する商品およびサービスを購入する際に意思決定に積極的に参加する傾向を示す。
通常、ラグジュアリー観光市場規模の算定基準は、各地域の航空統計のうち、ファーストクラスとビジネスクラスを利用する層を対象としている。最近では、リーズナブルな価格で満足度の高いプライベートジェットに観光需要が転換される傾向を示している。ITB(Internationale Tourismus―Borse Berlin)によると、グローバル市場におけるラグジュアリー観光客は約4600万人で、世界観光客の約4.2%に相当し、これらの観光消費規模は1720億ユーロで、世界観光収入の約18.3%を占めており、実に強大な消費力ともいえる。
ラグジュアリー観光市場の消費規模は、ラグジュアリー観光客の1日平均消費額は1万ドルを最低基準としており、実際、ラグジュアリー観光客の54%は1日当たり5千~1万ドルを消費し、いわゆるウィーバーラグジュアリーと呼ばれる上位層は1日の消費額が1万ドルを超えている。
ILTM(Int’l Luxury Travel Market)1によると、今後のアジア市場で有望なラグジュアリー観光地Top3は、1位東京、2位大阪、3位香港で、日本のポテンシャルを高く評価している。日本は、中国、香港、シンガポール、マレーシア、台湾など域内の主要国から、均等に好意的な評価を受けていることが分かった。
(帝京大学経済学部観光経営学科教授 金振晩)