【観国之光 500】二重価格 不公平感生まぬように 観光経済新聞 論説委員 内井高弘


入城料は二つの区分を設けた姫路城

 観光地で、訪日外国人観光客と日本人観光客・地元住民とで価格を別々にする「二重価格」を導入、あるいは検討する動きがある。好調な外国人客の消費をにらんだもので、施設の整備や維持、オーバーツーリズム対策など使途(思惑)はさまざまだが、外国人差別と受け止められないよう、丁寧な説明が求められる。

 7月25日に沖縄本島北部に開業予定の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。敷地面積約60ヘクタール(東京ドーム約13個分)という広大な敷地に20以上のアトラクションを設け、温浴施設やレストラン、ショップなども併設する。沖縄では過去最大級の民間プロジェクトであり、県経済への影響も大きい。

 入場料(大人)については、国内在住者は税込み6930円だが、外国人客を含む一般料金は8800円の二重価格とした。運営会社は「海外のテーマパークと比べて安い。グローバルで競争力のある価格」と説明、外国人にも理解が得られると判断したという。二重価格で収益を確保し、受け入れ態勢の整備や観光インフラの拡充などに充てる。

 世界遺産・姫路城がある兵庫県姫路市。先ごろ、入城料について「市民」と「市民以外」に分けることを決めた。当初は外国人客に限って値上げする方針だったが、「差別につながるのでは」との指摘があったほか、観光客と住民との線引きも難しいことから、結局、市民と市民以外の区分に落ち着いた。


入城料は二つの区分を設けた姫路城

 来年春からの導入を目指し、市民(18歳以上)は現行の千円に据え置き、市民以外は2500円とした。

 福岡県篠栗町の寺院・南蔵院。全長約40メートルの釈迦涅槃像などを目当てに足を運ぶ外国人観光客も少なくない。静かに見て回るのが常識だが、通じない観光客もいる。

 立ち入り禁止のエリアでの撮影や境内での花火、飲酒、ポイ捨て…。迷惑行為が目に余り、このほど外国人観光客に限って300円の拝観料徴収に踏み切った。日本人のほか、仕事などで長期滞在する外国人は無料。徴収した費用は清掃や警備などに充てるという。

 海外では二重価格は当たり前のようで、インドの世界遺産タージ・マハルは、外国人は1100ルピー(約2千円)でインド人の22倍とされる。

 外国人が増え続ける状況を考えれば、今後二重価格は意味を持ってくる。ただ、日本への旅行で外国人に不公平感を与えてしまっては元も子もない。どうバランスをとるのか、どう納得させるか、慎重な判断が必要だ。

 
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