
実習風景
観光は明日の日本を支える重要な産業といわれ、今後さらなる成長が見込まれるが、その成長を確かなものにするには優秀な人材の確保が必要不可欠だ。ここでは観光に関わる充実した教育環境を誇る大学、専門学校9校を取り上げた。
星野リゾートと教育連携
日本工学院専門学校は26年4月、ITカレッジに「ホテル・観光科」を新設する。従来の情報ビジネス科「ホテル・観光コース」をさらに発展させ、星野リゾートプロデュースによる教育で、次世代のホスピタリティ産業を担う観光人材を育成する。
「サービスは覚えるものではなく、自分で発想し生み出すもの」という星野リゾートの理念を共有。「観光マーケティングコース」「ホテルスタッフコース」の2コース制で、スマートフォンの普及やライフスタイルの変化、インバウンドの拡大などにより、旅行のあり方が大きく変わりつつあるホテル・観光業界の未来を見すえた教育を展開する。
同校では、専門学校で唯一、日本を代表するリゾート運営会社である星野リゾートと教育連携。ホテル・リゾートの実践的業務を学べる教育を実施している。星野リゾートスタッフの講師派遣や教育カリキュラムの共同開発をはじめ、星野リゾートでのインターンシップ、就職サポートなど多彩な取り組みを展開。観光業界に新風を吹き込み続ける星野リゾートのマインドやメソッドを取り入れ画期的な教育を提供している。
「観光マーケティングコース」では、星野リゾートのマーケティング術を授業に導入。授業の中で実際に観光プランを作り、実社会で活用する経験を通じて、観光業界を含む幅広い業界で活躍するために必要な知識とスキルを習得する。「ホテルスタッフコース」は、お客さまがホテルでより良い時間を過ごすためのサービスを、自分で発想して提供できるホテルスタッフ(ホテリエ)を育成するコース。ホテルスタッフにとって何より大切なホスピタリティ(深い思いやり・心からのおもてなし)の精神をコミュニケーションの一つととらえ、長年にわたりその向上に取り組んできた星野リゾートの接客ノウハウをベースに、お客さまとの円滑なコミュニケーションに必要な知識やスキルを幅広く学ぶ。
学生は、1年次前期は共通した学びや長期インターンシップを経験。後期には学びたい内容に合わせてコースを選択する。ホテル・観光科は、星野リゾートに加えて、近畿日本ツーリストや航空業界などの企業や地域とも連携。学生は、”旅を学び、旅をつくる”をキーワードに、地域活性化や観光デザイン、ホスピタリティマネジメントなどの専門力を、企業連携課題などを通じた超体験型実習で実践的に身に付けていく。
実習風景
遠藤麻由教師は星野リゾートの出身。2020年のホテル・観光コース発足時から学生の指導にあたっている。遠藤教師は来年度から始まる新カリキュラムである2コース制の狙いについて「観光マーケティングコースでは、新しい旅の魅力や旅のスタイルを提案できる人材教育を行います。観光デザインという新科目も導入し、ホテル、旅行会社だけでなく、OTA、DMO、観光行政などでも活躍できる人材を育成していきます」と話す。
遠藤教師
ITの専門家でもある三嶌秀三教師(ホテル・観光科科長)は、「マーケティングを本格的に学びたい学生にはAIを含めたITスキルも学べる環境を用意した。またホスピタリティサービスを極めたい学生はホテルスタッフコースに進むことができる。ITとマーケティングの専門知識を持つ人材。そして、接客サービスを極めた人材。2コース制により現在の観光業界に最も必要とされている人材を育成し、送り出していきたい」と強調する。
三嶌教師
AIシステム科学生とのコラボ授業
24年度の就職率は100%。卒業生の主な就職先は、星野リゾートを筆頭に、ホテルニューオータニ、ザ・リッツ・カールトン東京、マリオット・インターナショナルジャパン、ウェスティンホテル東京、三菱地所ホテルズ&リゾーツなどとなっている。