旅行を控えるようになった日本人 最新の「観光白書」から探る国内旅行の活性化


 日本人の国内旅行は、旅行人数や旅行回数、宿泊日数で考えると、ほぼ横ばいのトレンドにある。訪日インバウンド市場が拡大する一方で、国内旅行市場は少子高齢化、人口減少を背景に縮小していくのか。政府が発表した2025年版「観光白書」は、国内旅行の課題を分析、振興策を示している。国内旅行の活性化策を今一度探りたい。

今こそ国内旅行の再構築を

 観光庁の旅行・観光消費動向調査によると、国内旅行の消費額は、物価、宿泊料金の高騰など旅行支出の上昇の影響を受けて、24年に25.1兆円を記録し、比較可能な2010年以降で過去最高を記録した。

 しかし、国内旅行の延べ人数は低調だ。24年はコロナ前の19年比で8.0%減の5.4億人。内訳は宿泊旅行が同5.9%減の2.9億人、日帰り旅行が同10.4%減の2.5億人だった。過去10年で最多の17年の6.5億人(宿泊旅行3.2億人、日帰り旅行3.2億人)と比べると、1億人以上減少している。

 日本人1人平均の観光目的の宿泊旅行は、24年の1年間で回数が1.4回、宿泊数は2.4泊にとどまっている。コロナ禍の落ち込みを除くと、過去10年、ほぼ横ばいの状況だ。旅行回数が少ない上、ほとんどが1泊旅行で、短期の旅行が中心となっている。

 旅行に出掛けない人も多くいる。観光、帰省、業務を含む24年の国内旅行の経験率は、宿泊旅行が57.1%、日帰り旅行が42.1%に過ぎない。いずれもコロナ前より低い水準で、長期的に見ても伸び悩んでいる。

 観光目的に限って国内宿泊旅行の経験率を年代別に見ると、若年層ほど高く、高齢層ほど低い。24年は、20代が64.0%、30~40代が54.1%、50~60代が47.3%、70代以上が30.7%となった。各年代でほぼコロナ前の水準を回復しているが、「団塊の世代」を含む70代以上は、19年比7.9ポイント減と回復が進まず、旅行をリタイアする層もいるとみられる。

 観光庁の調査では、国内宿泊旅行を実施しなかった理由は、20~60代では「仕事などで休暇がとれない」「家計の制約がある」が上位。次いで「家族や友人等と休日が重ならない」「混雑する時期に旅行をしたくない」などだった。経済的な理由以外では、有給休暇など柔軟、長期に休暇が取れない環境が旅行の阻害要因となっている。

 一方、70代以上では、「自分の健康上の理由」が上位となった。

親子で「ラーケーション」 休暇の取得・分散化

 「観光白書」は、国内旅行の活性化に向けて、いくつかの方向性を示している。

 その一つが休暇取得・分散化を通じた旅行需要の喚起。観光産業の長年の課題だ。有給休暇の取得促進など柔軟に休暇が取れる環境整備が進めば、平日の旅行需要が拡大し、遠方の旅行や長期滞在が増加する可能性もある。旅行者にとっても混雑の回避、旅行費用の軽減など利点は多い。

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