
小林誠治氏
この4月には390万8900人を記録し、単月では過去最高を更新した訪日外国人客数。今後も順調に増加が期待される一方で、懸念されるのが、旅行客の荷物に紛れたトコジラミによる被害の広がりだ。
そこで、ダスキン(大阪府吹田市)でトコジラミ駆除を手掛けるターミニックス事業部の小林誠治氏に、旅館・ホテルなどの宿泊施設におけるトコジラミの対処方法などを聞いた。
――旅館・ホテルのトコジラミ被害の現状は。
宿泊施設、一般住宅を問わずに問い合わせは多い。コロナ以前は事業所よりも一般住宅の比率が多かったが、近年では事業所の施工軒数が一般住宅とほぼ変わらない比率まで増えてきており、事業所トコジラミ駆除施工のうち、約4割が旅館・ホテルという内訳となっている。
――トコジラミについて詳しく教えてほしい。
トコジラミは、米国ではベッドバグ(ベッドの虫)と呼ばれる。ベッド回りやカーテン、家具や枕の隙間、額縁や畳の隙間などに生息し、明るいところには姿を見せず、暗いところで活動する。 人の体温や呼吸により排出される二酸化炭素(CO2)などに反応して近づき、血を吸う。吸われるとひどいかゆみが発生する場合が多い。
トコジラミは、施設利用のお客さまのみならず、従業員が自身の家に持ち帰り、その被害が及ぶ可能性もある。施設で被害が拡大すると、発生した客室に加え、両隣などの客室を一定期間売り止めにして駆除をする必要がある。駆除費用もばかにならない。
そこで当社ではこの4月から、宿泊施設に特化して再設計したトコジラミの繁殖を未然に防ぐ「トコジラミ定期点検・予防サービス」をリリースした。
――サービスの具体的な内容を。
トコジラミが出てしまった段階で駆除をするのが当社のメインのサービスで、それは引き続き行っていくが、このサービスは、トコジラミが出ていなくても定期的に点検し、薬剤を散布してその繁殖を未然に防ぐものだ。
施設の費用面などの要望を聞きながらの提案となるが、例えば、60部屋がある施設であれば、全フロアを年間4回ほどに分けて実施する。併せて、客室清掃スタッフを対象にした勉強会なども催す。
要望があれば、「トコジラミ点検・予防サービス実施施設証明書」を発行する。
最近、トコジラミ発生の有無を気にする旅行者が多く、証明書は日本語、英語、韓国語、中国語の4言語で表記されているので、フロントなどに掲示すればインバウンドを含めた宿泊者へのアピールにもつながる。
トコジラミ点検・予防サービス実施施設証明書
――ダスキンが得意とするトコジラミ駆除サービスの特徴は。
薬剤だけに頼らない人と環境に配慮した駆除方法だ。まずは、プロの目でトコジラミの生息を調査しながらバキュームで吸い取り、冷却剤(スノードライアイス)を噴霧し、隙間に潜むトコジラミと卵を駆除する。
その後、生息していた場所や隙間に薬剤を注入。専用トラップで生息調査を実施し、駆除作業の7~10日後に駆除効果を確認。そして、初回点検から約10日後に再度、駆除効果を検証する。
オプションになるが高濃度二酸化炭素を使用した駆除も用意している。この駆除方法は特許を取得しており、熱処理などで素材を損ないたくない、人が触れるので薬剤を散布できない、といった素材に使用可能。
例えば、ぬいぐるみやテレビのリモコンなどにも使える。これらをポリ袋の中に入れ、CO2を充填(じゅうてん)して駆除する。
――最後に旅館・ホテルへのメッセージを。
トコジラミはピレスロイド系薬剤に対する抵抗性が高く、専門的な知識がなければ自力で駆除するのは難しいと思われる。
当社のサービスは、米国ターミニックス社のライセンスを取得している。同社の先端の駆除技術を使用し、かつ、社内研修で駆除技術の習得認定を受けたプロのスタッフが徹底して駆除を行う。
トコジラミのお困りごとは当社に任せていただければ、親身になって対応する。
小林誠治氏
ベッド下に専用トラップを仕掛けて生息調査を実施する