【EXPO2025特集】各紙誌の視点で見る「大阪・関西万博」 ハウジング・トリビューン


未来社会の建築見る 木材など多様な素材が一堂に

 「未来社会の実験場」のコンセプトを掲げた大阪・関西万博。その数々展示の受け皿となるパビリオンなどの建築も万博の大きな見どころの一つだ。

 その万博のシンボルが「大屋根(リング)」である。万博会場メインプロデューサーで建築家の藤本壮介氏によるデザインで、「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表す。主に集成材やCLTを使用し、建築面積(水平投影面積)は約6万平方メートル、リングの幅30メートル、高さ12メートル(外側は20メートル)、内径約615メートルの世界最大級の木造建築物で、全長は2キロ。寺社仏閣などで使用される日本の伝統構法「貫構法」を採用したことが特長で、「貫」と呼ばれる横架材で柱どうしを連結させるものだ。

 柱材の5割は四国産のヒノキ、残り5割がフィンランド産の欧州アカマツ、梁材は福島県産のスギで、これらを集成材に加工して使用する。また、「スカイウォーク」の床の役割も兼ねる屋根は愛媛県産のヒノキを原材料とするCLTだ。

 大阪府と大阪市による夢洲の会場跡地活用の「マスタープラン」を策定中。「リング」の北東側約200メートルを原型に近い形で活用、また、南側の約600メートルの当面の保存する案が示されている。今夏にもプランを確定する計画で、万博のレガシーがどのように次代に残していくかが注目される。

 一方、保存部以外の部分について、解体後の木材再利用の取り組みも始まっている。日本国際博覧会協会が譲渡先の公募を始めており、来年2月以降の引き渡しを計画している。

 今、わが国の建築業界は木造へのシフトが急速に進みつつある。世界最大級の木造建築物は、その技術を示すだけでなく、背景にある環境対策、循環型社会の形成などの姿勢を世界にアピールするものでもあろう。閉幕後の保存・活用までも含めた万博であってほしい。
 そうした視点からも注目されるのが、日建設計が設計した「日本館」。「入り口と出口」「表と裏」「内と外」といった境界を設けない円形状のデザインにより同館のテーマ「循環」を表現する。

 280組、560枚のCLTを内壁材、外壁材として利用し、全体で、熊本県、岡山県、高知県産のスギ木材によるCLT約1600平方メートルを使用する。このCLTは、閉幕後に日本各地でリユースされることを前提とし、解体のしやすさに配慮している。

 このほかにも注目される建築物は多い。「大阪ヘルスケアパビリオン」は、複数の局面で構成する透明膜屋根を採用。膜材に高機能フッ素樹脂をフィルム状にした透明な「ETFE膜」を使用し、1万もの鋼管を丸いジョイント2500個でつなぎ、複雑なトラス構造の屋根を形成する。

 「Dialogue Theater―いのちのあかし―」では、奈良県と京都府から三つの廃校舎を移築、三つのパビリオン建築として再生した。いずれも昭和前半に建築された木造校舎で、丁寧に分解し一つ一つの部材をチェック、さらに一つ一つの部材を組み立てて新たな形に作り上げた。

 「未来社会」の建築を見て歩くのも、万博の楽しみ方の一つであろう。

(ハウジング・トリビューン)

世界最大級の木造建築物「大屋根(リング)」
世界最大級の木造建築物「大屋根(リング)」

 
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