
対話重視、有益な関係構築へ
東武トップツアーズの2025年度の事業方針は―。「仕入の現状と課題」について尾崎利行・執行役員営業統括本部企画仕入、子会社・関連会社担当に聞いた。(溝部あゆ美記者)
――昨年度の仕入の取り組みや成果について。
昨年度は、(1)団体事前仕入枠の強化(2)閑散期の送客対策(3)仕入管理の徹底―の3点を軸に取り組みを展開した。
国内団体旅行売り上げの約4割を占める教育旅行は、宿泊先選定に旅ホ連会員の皆さまとの連携が欠かせない。特に、東京・京都に加え、万博開催を見据えた関西地区においては、事前仕入枠を拡充。特定の時期に需要が集中する中でも、会員の皆さまからお預かりした部屋をできる限り完全消化を目指し、提案型セールスをはじめとするさまざまな営業施策を講じた。
閑散期の送客対策は、幅広い顧客層に向けて、各エリアにおいて連盟各支部と連携し付加価値を提供する誘客キャンペーンを実施。閑散期にもしっかりと実績を積み上げ、会員施設との良好な信頼関係の継続にも寄与した。
仕入管理については、全仕入拠点において、管理台帳の適正運用を目指し、現場からの情報収集に注力した。
リアルエージェントとしての強みは、お客さまから直接ヒアリングした声を迅速に旅ホ連・運観連会員の皆さまへお伝えできる仕組みにある。現場の声を適切に反映した伝達力が、仕入の質を高める上で重要な役割を果たしている。2027年には新たな顧客管理システムの導入も予定しており、情報の一元化による顧客情報を今より早いスピードで把握し、会員の皆さまとの信頼構築をさらに進めていく。
両連盟とは、コミュニケーションサイト「連盟.com」を通じて連盟本部・支部活動や会議情報の共有を進めており、すでに一部地域ではデジタルによる会員紹介など、時代に即した取り組みも展開。こうした情報基盤整備が、仕入の最適化と関係強化に直結している。
――仕入に関する課題は。
業界全体の大きな課題とも言えるが、インバウンドの増加による仕入環境の変化だ。一部エリアにおいては、海外エージェントやOTAによる受注期間の長い先行予約によって、慢性的な満室状態が続き、日本人観光客の予約が取れない状況が発生している。一方で、インバウンドの恩恵が十分に得られていない地域もあり、エリア間での温度差(二極化)が進んでいる。連盟会員とのより密な情報交換を図り、お互いにメリットの出せる対策を講じていきたい。
価格高騰も深刻な課題だ。人件費や原材料費の上昇はもとより、インバウンド需要の増加(さまざまな価値観の差異)により、宿泊料金は過去に例のない水準まで高騰している。原材料費の影響が宿泊代金に反映されるのはやむを得ないが、インバウンド需要により、相場観が急激に塗り替えられてしまっている現状については、業界全体としての対策が急務だと考える。一方、お客さまにもその背景を理解いただきながら、丁寧にご案内していく必要がある。企画商品造成においては、価格の安定した商品提供が重要だ。その土台となる事前仕入枠の運用は、当社の強みだ。
宿泊以外の課題としては、貸し切りバスの手配の厳しさが挙げられる。貸し切りバス業界においては「2024年問題」に起因し運転手の確保が困難になっており、時間管理の制約もあることから、バス会社との調整がこれまで以上に複雑化している。当社では、国内旅行センター・仕入センターを中心にエリアごとに貸し切りバス事業者さまと勉強会を継続的に開催し、相互理解を深め、お客さまへ企画提案を行っている。
――25年度の国内旅行市場の見通しについて。
25年度は、大阪・関西万博をはじめ、瀬戸内国際芸術祭や沖縄のテーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」など話題性の高いイベントや施設の開業が続き、国内旅行需要の拡大が期待できる。
また、経済全体の緩やかな回復を背景に、25年度の給与ベアは、平均賃上げ率が前年度比5.46%と34年ぶりの高水準となった。そして、円安による海外旅行費の高騰により、海外旅行を控える動きが今年も続いている。こうした動きは、国内消費行動を活発化させる要因になるはずだ。
一方で、米国の関税政策がもたらすさまざまな経済リスクには注視が必要だ。世界情勢の不安定さが企業業績に影響を及ぼし、結果として国内旅行市場にも少なからず波及する可能性がある。当社では、グローバル企業とのお取引も多数あることから、企業のイベント動向にも引き続き注視していく。
――今年度の仕入販売目標と具体的な取り組みは。
宿泊券の販売目標は、前年比120%を目標としている。教育・一般団体市場は、昨年以上の強い需要を捉えており、事業計画以上の着地を期待できる。現在は、旅ホ連・運観連の各支部で毎年好評の誘客キャンペーンを展開中だ。
個人旅行では、WEB販売の増売強化策としてJR乗車券と宿泊をセットにした個人向け商品「スゴ得」の販売を強化。毎月5と0の付く日を「スゴ得の日」とし、ポイントアップ施策を実施している。
――旅ホ連・運観連との連携について。
当社は地域連携を高めるため、全国12カ所に仕入拠点を設けている。今後は、これまで以上に両連盟との対話を重視し、双方の事業にとって有益な関係構築を進めていく所存だ。
また、若手社員の育成面でも大きな意味を持つ、商談会や現地研修、キャラバンなどの取り組みに加え、新たな事業も構築していく。
会員の皆さまから学ぶ機会を増やし、現場とのつながりを大切にしながら、共に発展していきたい。
尾崎氏