設立30周年迎える水利協(全国水利用設備環境衛生協会)大熊久之会長に活動方針を聞く


大熊会長

レジオネラ症 温浴施設で事故多発 衛生管理の重要性を啓発

 全国水利用設備環境衛生協会(通称=水利協、東京都台東区)は水利用設備の衛生管理の重要性などを啓発する任意団体として、今年設立から30年の節目を迎える。

 会長の大熊久之氏に今後の活動方針などを聞いた。

 ――改めて、協会の紹介を。

 1995年の設立以来、水を利用する設備機器やそれらを使用した施設などの周辺環境の衛生問題を提議して、解決を図ると同時に、時代に即した衛生教育や衛生管理技術を啓発することを目的としている。

 また、2007年には、厚生労働省から社団法人として認められ、2014年に内閣府から公益社団法人の認可を受けた。

 肺炎などを引き起こす恐れのあるレジオネラ属菌の増殖やレジオネラ症への感染を防止するための方法・技術を伝え、環境衛生の向上の必要性を提唱する唯一の公益団体として今に至る。


同協会の施設衛生管理基準に適合する施設に与えられる「水利用施設衛生管理適合証」

 ――宿泊市場の現状をどう捉えているか。

 政府が経済戦略の一環として「観光立国」を掲げて観光需要拡大の好機となる中、さまざまな問題が山積している。労働力不足や物価上昇、またオーバーツーリズムによる日本の文化・慣習への影響やモラル・マナーの違いによる地域社会への影響などが宿泊市場のさらなる拡大を妨げているとみる。

 ――7月には設立から30年を迎えるが、発足当時と現在の宿泊市場などにおけるレジオネラ対策といった衛生への意識の変化については、どのように考えているか。

 設立当時の1995年はレジオネラ症の感染者が年間で100人も満たなかったが、今日までに24時間風呂の社会問題を皮切りに、温浴施設での集団感染、高齢者施設・スポーツ施設での発生や、近年では福岡県の老舗旅館の事故などあまたの事件・事故が起こった。2023年時点では感染者数が2271人となり、昨年は最多の2419人を記録した。

 施設の合理化、多目的化に加え、水利用設備機器の機能・性能の向上や、薬剤の開発が進み、衛生管理も多様な対応・対策が求められている。

 しかしながら、レジオネラ属菌の発生や感染予防には、この30年間を見ても、日頃の衛生管理に勝るものはない。

 ――設立から30年という節目を契機に、今後の活動方針については。

 この30年間で学んだ「衛生の重要性と危機管理」を啓発することにより、当協会は次世代に「衛生管理の重要性」を継承しなければならない。これからも自治体・保健所との連携を図り、「水を利用する施設、設備の利用者の健康被害の防止」の活動に協力する。

 同時に、「水利用設備環境衛生士」「水利用施設衛生管理適合証」「水利用飲食施設店舗衛生管理適合証」による知識・技能の普及により、安心・安全な生活空間、職場環境作りに寄与していく覚悟だ。

 ――宿泊市場へのメッセージを。

 これからの日本経済の一翼を担う観光産業の経営の安定には、「おもてなし」とともに「清潔な環境」が必要だ。

 当協会は引き続きこれらの問題解決に取り組み、国民の健康と安全・安心な社会づくりに尽力する。


大熊会長

 
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