
前号で約束したクローズドループ方式地中熱利用の熱源水ネットワークシステムの紹介の前に、エネルギーの有効性に触れたい。
エクセルギーという言葉を耳にされたことがあるだろうか?
まず、図の左側の「(a)エネルギー」のように、0度・50キログラムの冷水と60度・50キログラムの温水があるとする。この二つの水を混ぜた30度・100キログラムの水が持つ熱量は、前の二つの水が持つ熱量を足したものと同等である。つまりエネルギー量としては、どちらも同じになる。
つぎは、図の右側の「(b)エクセルギー」である。30度の水の熱の使い方は限定的だ。0度の水であれば冷房に使えるし、60度の水は暖房や給湯に使える。この有用性の違いを評価するものがエクセルギーである。
さらに、アネルギーという概念がある。アネルギーは、無用な熱と捉えられる。エクセルギーとアネルギーを足したものが、エネルギーとされる。アネルギーはヒートポンプを活用することで有用な熱に変身する。
ヒートポンプの暖房・加温の際に生じる冷排熱や、冷房・冷却で生じる温排熱はアネルギーの一つだ。無効な冷排熱と温排熱同士を配管で結び、ヒートポンプの熱源にすることで有効な熱として利用できる。冷排熱量と温排熱量は、季節や時間帯により変動する。はみ出た分の排熱を地中に送り、蓄熱する。その際、その地域の地中温度に近い温度で蓄熱するように計画・設計を考慮することで、熱ロスを軽減できる。
温泉旅館は、年間を通して給湯や浴槽加温があることから冷排熱が生じやすい。例えば、データセンターやショッピングセンター等は、温排熱が過多になる建築用途である。
熱需要の異なる施設同士を結びつけ、熱の面的利用するシステムをアネルギーネットワークとか、熱源水ネットワークと呼ばれる地域熱供給になる。お互いのアネルギーを補完しながら利用し合うことで有効性を高められる。スイス連邦工科大学チューリッヒ校で大規模に導入されており、現在も進化し続ける。
前回紹介した、ダブル蓄熱システムを組み合わせることで、廉価な余剰再エネ電力の活用、電力の逼迫(ひっぱく)時の高価な電力料金を回避しやすくなる。
地中熱の連載の最後に、再エネ熱の補助金・融資制度を紹介する。再エネ熱の補助金・融資は、NPO地中熱利用促進協会のホームページの「国・自治体情報」に掲載されている。再エネ熱の補助金・融資に限らず、同じ名称の継続事業でも、年度ごとに要件や対象が変わることがあるので注意が必要である。
利用したい用途やシステム等が、どの補助金・融資に適合するのか分かりにくい。補助金や融資の申請の支援・指導を受けやすい3社を挙げるので相談していただきたい。
・省エネ・脱炭素全般:スマートエコソリューションTEL03(5050)4703
・再エネ熱利用ヒートポンプ:ゼネラルヒートポンプ工業 本社統括営業本部TEL052(589)9010
・省エネ・再エネ熱利用システム全般:ミサワ環境技術 営業企画部・技術開発部TEL0824(66)2281
(国際観光施設協会エコ・小委員会委員、東北文化学園大学客員教授、元・福島大学特任教授 赤井仁志)
(観光経済新聞25年6月16日号連載コラム)