
全日本ホテル連盟(清水嗣能会長=福井県・福井国際観光ホテルリバージュアケボノ、ANHA)は12日、2025年度定時総会をホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区)で開いた。任期満了に伴う役員改選で清水会長を再選。将来を見据えた連盟運営を実現するための具体策を検討する「政策諮問委員会」を新設するとともに、横の連携を重視した「支部長会」を設け、持続可能な運営体制の構築を目指す。
冒頭あいさつに立った清水会長は、4期8年の在任期間中に取り組んできたことを振り返り、同連盟の理念であるMVVS(ミッション・ビジョン・バリュー・ステートメント)を基盤に据えて事業を推進してきたと説明。「MVVSの考え方を新たに構築し、それを日々の事業にどう落とし込んでいくかを考えながら取り組んでいることは、今後の連盟の在り方を示すものだ」と述べ、連盟活動の意義を改めて強調した。
会長5期目に就いた清水会長。これまでに取り組んできたことや今後の連盟運営について語った
25年度事業の最大のポイントは「政策諮問委員会」の新設だ。本部が取りまとめている会員のNHK放送受信料に関わる手数料の収益に依存せず、持続可能な団体運営を目指して具体策を検討する。委員長には副会長の小林磨史氏(長野県・ホテルニューステーション)が就き、清水会長や藤野公孝最高顧問、本部の有野一馬専務理事、吉本充事務局長らも委員会メンバーとして参加。会員の要望調査に加え、業界を取り巻く法令改正や規制緩和に向けた政策提案をまとめ、理事会での提言も行う。
加えて、今年度から支部長会を設置し、支部運営および支部の在り方について議論・検討する。「ANHAは本部での委員会活動と、8支部(北海道・東北・関東・甲信越・中部・近畿・中国四国・九州)での活動―の二つの活動が両輪となっている。横のつながりで各支部長が一緒に考え、今まで1回もやっていなかったことをチャレンジする。皆さんのご協力をお願いしたい」(生内副会長)。
副会長に就任した生内氏が活発な支部運営のための協力を呼び掛けた
総会では、理事および監事の任期満了に伴う役員改選を行い、正式に承認。また、同日開かれた臨時理事会で清水会長の再選が決まり、新たに副会長と常任理事をそれぞれ1名ずつ選出した。
ANHAの会員数は現在、1402軒(準会員含む)で、そのうち約8割をチェーン店が占める。今後はチェーン店会員の連盟内での役割を拡充するとともに会員増強に努め、1500軒を目指すことを重点目標の一つに掲げた。
定款の一部も改正された。これまで事業計画書および収支予算書は、年度開始前に会長が作成し、理事会の決議を経た上で6月の総会で承認を得る必要があったが、今後は会長が作成後、理事会の承認のみで開始できるように。これにより活動開始時期が4月1日からと前倒しになり、「(従来から)2カ月早く活動が開始できる。連盟にとっても大きな前進だ」(清水会長)。
総会後は、各委員会から今年度の活動内容を報告。連盟が掲げる「国づくり」「会づくり」「人づくり」「宿づくり」の4本柱を軸に、タウンミーティングやホテル産業フォーラム、各種セミナーの開催、諸規定の見直しなどの事業を推進する。
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続く講演会では、観光庁長官の秡川直也氏が「我が国の観光の現状と今後の展望」と題して講演。訪日外国人旅行者数の推移や地方誘客における高付加価値なインバウンド観光地づくりの取り組み、大阪・夢洲に30年秋ごろ開業を予定している総合型リゾート「大阪IR」計画などについて説明した。
講演する祓川観光庁長官
講演に耳を傾ける会員ら
懇親会には、会員のほか、宿泊業団体関係者、中野洋昌国土交通大臣、秡川観光庁長官など約230人が出席。政界からは小池百合子東京都知事、斉藤鉄夫衆議院議員(元国土交通大臣)、自民党の稲田朋美衆院議員(元防衛相)らが駆け付け、祝辞を述べた。小池知事は、「良質な宿泊サービスの提供をいただき、観光産業をけん引していただきたい」と呼び掛け。業界の重鎮が一堂に会し、会員との活発な意見交換や交流が繰り広げられた。
小池都知事
中野国交大臣
新任役員は次の通り(敬称略、カッコ内はホテル名)。
【副会長】生内雄二(岩手県・二戸シティホテル)
【常任理事】北原信輔(大阪府・SARASA HOTELなんば)
【理事】神津亜紀(長野県・ホテルナガノアベニュー、甲信越支部長)▽成田雅範(愛知県・三交イン、中部支部長)▽中島秀雄(兵庫県・ホテル・カサベラINN神戸、近畿支部長)