
石田取締役
JTB旅ホ連の総会に際して、JTBの各事業・領域、グループ会社などのトップに2024年度の取り組みの成果、25年度の事業の方向性、旅ホ連との連携などについて聞いた
新たな目的地、地域と開発 サステナブルな観光を推進
――まずJTBグローバルマーケティング&トラベル(GMT)について教えてほしい。
「もともとJTBは1912年、外客誘致のために創立した。その祖業である訪日インバウンドに113年間、向き合い続けている会社がGMTだ。日本で最古、最大の訪日インバウンドに特化した会社でDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)だ。JTBから分社して2005年に営業を開始し、今年で20周年を迎える。DMCとして、日本における旅行や周遊型ツアー、MICE、そして旅行中の緊急対応などをトータルで提案している」
――2024年度のGMTの取り組みは。
「大きく分けると、レジャー事業と法人事業の二つに分かれ、レジャー事業については、対象市場の北米、欧州、スペイン語圏、アジア、中近東で取り扱いが拡大し、そのうち宿泊販売は、個人が前年度比160%強、団体が約120%、おしなべて140%ぐらいだった」
――24年には訪日外国人向けパッケージツアー「サンライズツアー」が60周年を迎えた。
「日本最古のパッケージツアーだ。24年にはサンライズツアーの商品が『ツアーグランプリ』の訪日旅行部門で観光庁長官賞を受賞した。インバウンドの地方分散・オーバーツーリズム対策、持続可能な観光の推進に向けて、首都圏―北陸エリア―関西圏を周遊する『レインボールート』を開発し、新たな人流創出が期待できる点が評価された」
「サンライズツアーではレインボールートに加えて、北海道アドネイチャールート、東北ディスカバリールート、せとうちシーニックビュールート、九州オーセンティックルートの計五つのルートを開発した。自治体やDMO、観光事業者と連携しながら、地域の魅力を引き出し、さらにルートの周辺地域も観光してもらえるよう現地発着ツアーの企画も拡充している」
――GMTは、持続可能な観光の国際認証であるGSTCツアーオペレーター認証を25年3月に取得した。
「持続可能な観光の国際認証に関しては、22年に『Travelife(トラベライフ) Certified』を取得した。現在、日本国内でGSTCと『Travelife Certified』の両方の認証を取得しているのはGMTだけ。サステナブルな観光に全社で取り組んでおり、特にヨーロッパからの旅行やMICE、国際的なクルーズ会社と取引するには認証の有無が重要だ。旅ホ連の会員施設においても、特にヨーロッパのお客さまを獲得するには、サステナビリティへの取り組みは必須。グローバルホテルチェーンや大手ホテルだけではなく、旅館においてもここは避けて通れなくなっている」
――25年度のGMTの取り組みは。
「大阪・関西万博の関連では、世界中から来日する賓客の対応などに注力している。8月に横浜で開催されるアフリカ開発会議(TICAD9)をはじめとする国際会議や、グローバル企業のインセンティブツアーも多く受注している。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアからのクルーズにおける日本国内の寄港地でのエクスカーションも多い。加えて、自治体やDMOなどを対象とするソリューション事業も拡大している。訪日インバウンドに関するプロモーションや商品開発、コンサルティングをトータル、ワンストップで支援している」
「GMTはB2Bをベースに、真のDMCを目指している。コロナ禍では厳しい状況に置かれたが、人員・体制を強化し、生産性を高めるためにBPR(業務再構築)を進め、事業を拡大する環境を整えている。アウトプットとしては、団体旅行、サンライズツアー、MICE、そしてオンライン会社へのコンテンツの提供を通じたFIT(個人旅行)、クルーズ、富裕層、これらを軸に伸びる市場に対して愚直に取り組んでいく」
――オーバーツーリズムも指摘されるようになったが、訪日インバウンドの持続可能な発展への課題は。
「大都市に対して地方の多くの地域は、まだまだ訪日インバウンドの旅行者数が少ない。そうした地域では、インバウンド向けの旅館・ホテルが少なく、通過点になってしまうのであまりお金が落ちない。地元にお金が落ちないからインバウンドへの設備投資も進まない。これから人口減少が進むと税収が減っていく。今、宿泊税が各地で議論されているが、インバウンドを受け入れ、観光客の消費を、または宿泊税を、しっかり観光振興への投資に回し、地域を活性化していくという仕組みが重要になる。GMTでは、周遊型のツアーが地方に向かうよう提案するなど、新しいデスティネーションを求めて、自治体やDMOにアプローチしている。地域資源を磨いて商品をつくり、ファムツアー、プロモーションといったマーケティングを一緒にやりませんか、と提案している。実際に送客につながっている地域もあるので、インバウンド受け入れへの投資をご検討いただきたい」
――旅ホ連の会員施設に向けた期待は。
「ホテルが外国人のお客さまでにぎわう一方で、われわれは、まだまだ日本旅館の良さを訪日インバウンドに生かしきれていない。ベッドタイプの和洋室や露天風呂付きの客室を持つ旅館も増えてきている。そうした設備投資は進んでいるが、依然として訪日インバウンドの受け入れに難しさを感じている施設は少なくない。まずは1室から訪日インバウンドへ提供を始めてみてほしい。GMTとしてもしっかりとお客さまをお送りしていく。世界的な潮流であるサステナビリティへの対応と併せて、将来を見据えた取り組みをお願いしたい」
石田取締役