
池口執行役員
JTB旅ホ連の総会に際して、JTBの各事業・領域、グループ会社などのトップに2024年度の取り組みの成果、25年度の事業の方向性、旅ホ連との連携などについて聞いた。
チャネル連携で販売拡大 訪日予約のポジション向上へ
――2024度のWeb販売事業の取り組みについてお聞きしたい。
「JTBのWeb販売事業には、『JTBホームページ』『るるぶトラベル』、訪日外国人旅行者向けの『JAPANiCAN』という三つのサイトと、提携先サイトでの販売がある。トータルの24年度販売額は、23年度を少し上回る数字で着地した。特徴的なのは訪日旅行の伸びが非常に強く、数十%のレベルで増加した。一方、国内旅行は単価の上昇はあったが、さまざまな要因もあり、マーケット全体を含めて、そうした伸びには至らなかったと想定している」
――各サイトでの取り組みは。
「『JTBホームページ』では、会員システムを刷新し、お客さまのログインをしやすくしたり、アプリの機能を充実させたりした。OMO(オンラインとオフラインの融合)の強化、Webと店舗の連携では、来店予約がアプリから可能になったほか、オリジナルコンテンツの特集、記事と販売との連動を充実させた。お客さまのサイトへの流入は前年度比で10%以上伸びており、アプリの利用も全体の1割近くまで拡大している。JTBトラベルメンバーの会員数も1700万人に到達した」
「『るるぶトラベル』は、モバイルアプリが24年4月にAndroid版、11月にはiPhone版をリリースした。アプリユーザーに対してはクーポンなどの特典を提供している。アプリに関する本格的なプロモーションはこれからだが、さまざまなキャンペーンなどを実施しており、着々と利用者が増えている。また、『るるぶトラベル』では、海外ホテルの予約サービスを開始した。海外ホテルの販売を強化したいというより、幅広いお客さまとの接点を確保するために導入した。これは国内の宿泊販売にも良い影響が出るだろう。実際、海外旅行を検討していたお客さまが結果的に国内旅行に落ち着いたケースも見えてきており、相乗効果があると考えている」
「『JAPANiCAN』に関しては、コロナ禍で参画を停止していた宿泊施設に対し、宿泊プランの登録再開をお願いしてきた結果、訪日インバウンドの好調を背景として販売が伸びている」
――サイトのユーザビリティ(使いやすさ)の向上については。
「これは終わりがないものだと思っている。常にアップデートし続ける必要がある。データを調べて、お客さまのサイト上での動きを把握し、お客さまが少しでも迷うようなタイミングがあれば、何か課題があると捉えて日々改善している。大きなリニューアルの予定は現時点ではないが、新しいサービスについて、いくつかチャレンジングなものを考えている」
――AIの活用は。
「お客さま直接へのサービスとしてはまだ表に出していないが、裏側の業務やお客さまへのレコメンドの出し方などでは、すでにAIが走り始めている。ただ、ハルシネーション(AIが誤った情報を生成してしまう現象)で誤解を与えることは、旅行という大切なものにおいてはあってはならないので、大胆にやるべきところと、慎重にやるべきところのバランスを持ちながら進めていく」
――25年度のWeb販売事業でポイントとなる取り組みは。
「マーケットの成長率を上回る事業の拡大を確実にする必要がある。まずはそれが最低限の目標だ。『JTBホームページ』では、引き続きお客さまの声を反映させてCX(顧客体験)の向上に取り組む。OMOを軸として、JTBの強みであるチャネル連携で、お客さまの購買体験のストレスをゼロにすることに徹底的に取り組んでいく。購買体験においても満足いただけるよう、機能改善やサイトの魅力づけに取り組む。宿泊施設の写真や現地情報など、コンテンツの強化にこだわりたい。温泉やテーマパークなど、旅行の目的によって探しやすい形の展開を徹底し、検索キーワードに基づく特集ページの展開、店舗スタッフなどによる紹介記事などの情報発信も強化していく」
――訪日インバウンドに関する取り組みは。
「訪日に関しては大きく二つの取り組みを考えている。一つは宿泊施設の課題解決で、例えば、現地決済時のトラブルやキャンセル料の問題などを解決するため、事前決済の仕組みを導入するなど、お客さまと宿泊施設の困りごとを解決する取り組みだ。もう一つは、特定のソースマーケットで訪日予約ナンバーワンのサイトポジションを目指すことだ。各エリアに根付いた現地のサイトに勝つのは難しいかもしれないが、特定エリアでは、『日本に行くならJAPANiCAN』と言っていただけるようなポジションを目指したい」
――旅ホ連の会員施設との連携は。
「会員施設の皆さまには、各地のDMC支店や仕入商品事業部を通じて、地域を盛り上げるためのサイト内プロモーションや地域特集の展開にご協力いただいている。そうした部分での連携を強化するとともに、サイトコンテンツの充実のため、写真の登録・更新や現地情報の提供をお願いしたい。また、訪日インバウンドでは、まだ販売を再開されていない施設が一部にあるが、マーケットは伸びているので、多くのお客さまに足を運んでいただけるようプラン登録をお願いしたい。海外提携先のAgoda、Trip.comを含めて販売を拡大していく。国内旅行、訪日旅行を問わず、JTBの販売チャネルを総動員し、販売量を拡大、宿泊施設に貢献していきたい。新たな国内客室管理ツールも最適にご活用いただき、販売を拡大できるよう引き続きご協力をお願いしたい」
池口執行役員