【JTB旅ホ連総会開催記念特集】各事業・領域の現状、展望 JTB専務執行役員 ツーリズム事業本部長 西松千鶴子氏に聞く


西松専務

 JTB旅ホ連の総会に際して、JTBの各事業・領域、グループ会社などのトップに2024年度の取り組みの成果、25年度の事業の方向性、旅ホ連との連携などについて聞いた。

付加価値の高い体験提供 インバウンド販売拡大に重点

 ――ツーリズム事業の2024年度の取り組みは。
 
 「24年度は、コロナ禍からの旅行需要の本格的な回復の中で、ツーリズム事業の再生と新領域拡大による成長に向けチャレンジした1年だった。スローガンには『成長モデルの見える化』を掲げ、市場の伸びを捉えると同時に、次につながる新たな領域の事業を具現化するという二軸で動いてきた。観光業界を取り巻く環境では、異常気象や天災、日本人のアウトバウンドの回復の遅れ、国内旅行については、訪日インバウンドの拡大に伴う価格高騰や客室不足、加えて直販化がさらに進んだ。そうした環境変化に対応していくことが課題だ」

――旅行販売の状況は。
 
 「国内旅行の販売額のうち個人領域は前年比103.4%と伸びたが、市況の伸びに比べると少し鈍い。法人など一般団体は19年度の数値を超え、教育旅行は過去最高となった。一方で海外旅行は19年度比で60%程度の回復にとどまった」
 
――成果については。
 
 「MLB東京シリーズのホスピタリティプログラムを提供し、それを体験価値の高い商品に転換できた。スポーツ関連では、Jリーグとサッカーや地域を起点とした交流の促進で提携した。スポーツと交流創造事業は親和性が高く、今後も力を入れていく。国内旅行キャンペーン『日本の旬』では、上期の『北陸』、下期の『京都・奈良・滋賀』で新しい旅のコンテンツを発掘できた。25年度下期の『沖縄』でも成果を上げたい」

――24年度の宿泊販売目標の達成状況は。
 
 「上期の滑り出しでプラン確保に課題があったが、期中で挽回を図った。目標到達までわずか、というところであったため、24年度の課題を生かし、25年度も取り組んでいきたい」

――新しい国内客室管理ツールの運用については。

 「JTBの強みは、法人・個人、日本人・訪日外国人という多様なマーケット、店舗・Web・コールセンターという多様な販売チャネルを持っていることで、新しいツールは宿泊日に対して早い段階から宿泊プランをしっかり販売できる仕組みだ。旅ホ連会員の皆さまとのコミュニケーションを大事にしながら、売り時をしっかり捉えて、付加価値の高い体験をお客さまに提供していきたい」

――25年の旅行市場は。
 
「JTBの旅行動向見通しでは、日本人の国内旅行は24年比で人数が102.・7%、総消費額が103.8%を見込む。人数、消費ともにコロナ前の19年を上回る見通しだ。海外旅行は回復が進んでいるが、19年比で人数が70.3%、総消費額が98.7%となっている。そして訪日外国人旅行の人数は過去最高の年間4020万人を見込んでいる。国内旅行と訪日外国人旅行については、大阪・関西万博、東京での世界陸上やデフリンピック、『ジャングリア沖縄』の開業などプラス要素が多い」

――25年度において重視する取り組みは。
 
「JTBグループの25年度方針は、前年度に引き続き『未来から現在(いま)をつくる』を掲げ、サブタイトルを『ビジネスモデル変革の加速』としている。24年度から海外旅行と国内旅行それぞれにビジネスモデル改革プロジェクトを立ち上げ、未来を見据えた変革を進めている。『お客様起点』として、マーケットに目線を置いた成長サイクルを再構築している。具体的には、デスティネーションと発地マーケットを商品や仕組みでしっかりつないでいく。高付加価値商品の開発やニーズに適合する商品の提供、効果的なプロモーションの展開などを一体的に進めていく」

 ――店舗とWeb、デジタルとリアルを融合させた提案、販売の取り組みは。
 
「個人領域では、OMO(オンラインとオフラインの融合)を強化している。リアルからウェブ、あるいはウェブからリアルという双方向の流れに、コールセンターも加えた基盤ができた。Web販売におけるUI・UXの向上はもちろん、店舗やコールセンターにおける専門性の高い人財の育成に力を入れている。AIの活用は進めるが、最終的には、人にしか提供できない価値をJTBの強みとして大事にしたい」

――好調な訪日インバウンドの需要の取り込みは。
 
「宿泊目標に関してはうち6割以上をWeb販売で獲得する計画だ。Agoda社との連携や、Trip.com社との連携で立ち上げたJTB Inbound Trip、自販サイトの『JAPANiCAN』といったチャネルを活用していく。訪日の仕入業務には専任担当を配置し、24年度には参画宿泊施設数の拡大に注力した。25年度は販売拡大に重点を置いていく」

――旅ホ連との連携について考えをお聞かせください。
 
 「変革の激しい時代にあっても、お客さまにサービスをお届けできるのは、旅ホ連の皆さまの協力があってこそだと感謝している。仕入機能を各地域の支店などに移管した『法個仕(法人・個人・仕入)体制』になって4年目を迎え、自治体への橋渡しやコンテンツの共同開発など、旅ホ連との連携についても実績が積み重なってきた。25年度の宿泊販売目標、さらには28年度の目標達成に向け、旅ホ連会員の皆さまと共にさまざまな取り組みを進めていきたい。これまでに引き続き、47DMCや仕入販売部との連携を強化していただき、地域の持続可能な観光地づくりや魅力あるコンテンツの発掘、さまざまな企画の造成に、ご協力をお願い申し上げたい」  


西松専務

 
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