
大塚専務
JTB旅ホ連の総会に際して、JTBの各事業・領域、グループ会社などのトップに2024年度の取り組みの成果、25年度の事業の方向性、旅ホ連との連携などについて聞いた。
M&Eに注力、収益拡大へ 「旅メディア」で宿を生かす
――ビジネスソリューション事業の2024年度の取り組みについてお聞きしたい。
「ビジネスソリューション事業は企業を対象に、アウター(顧客)、インナー(従業員)、双方のコミュニケーションに関する課題を解決する取り組みを担っている。事業本部の営業個所と、グループ会社のJTBビジネストラベルソリューションズ、JTBコミュニケーションデザインを含め、24年度の売上総利益は計画に対しては達成がかなわなかったが、営業利益は経費削減を進め、計画比を超える結果となった。アウトバウンド以外の旅行需要が回復し、事業の柱である企業のミーティング&イベント(M&E)などの需要が大幅に増えた。自治体のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務も一定程度、受注できたことも大きかった」
――M&Eの成果は。
「企業の周年事業に伴うイベントは、コロナ禍で全て止まってしまっていたが、一気に戻ってきた。23年度に企画を立案し、24年度にイベントを実施するグローバル企業や日系企業が多かった。海外の社員も招いて日本国内で行うイベントも目立った。オンラインを併用して複数の会場を結ぶハイブリッドイベントも増え、リアルとオンラインを融合させる当社の強みを生かすことができた。また、単発のイベントにとどまらず、周年事業を契機に、社員同士や取引先とのエンゲージメントを高めましょう、あるいは、お客さまを招いて感謝の集いを行いましょうという提案ができ、年間を通じて研修会や表彰式、各種プロモーションなど、さまざまなイベントの受注につながった」
――旅行を伴うM&Eの動きはどうか。
「保険会社やIT企業を中心に、大型のインセンティブ旅行の需要が戻ってきた。500人から千人規模で複数のホテルに分宿するような案件もあった。企業が動き出すと、宿泊施設の平日の客室、宴会場の稼働率アップにつながる。旅ホ連会員の皆さまにも貢献できるよう引き続き注力していきたい」
――M&Eに次ぐ事業の柱はどの分野か。
「企業の商品・サービスに関するプロモーションのサポートだ。市場へのアプローチに課題を抱えている企業に、ユニークベニューなどを含めたイベントを提案している。人が集まり、交流するイベントはプロモーションの絶好の場。例えば、音楽フェスの来場者に新商品をPRしたり、大型スポーツイベントに際して特定の顧客にホスピタリティプログラムを提供したり、そうした提案も強化している」
「プロモーションの新たな要素としては、新商品のサンプリングなどのために旅行や旅館・ホテルを活用する『旅メディア』がある。旅館に泊まって温泉に入った後に新商品の飲料や化粧品を体験してもらうとか、国立公園のロケーションを生かしてデジタルカメラの新製品を体験してもらうとか、そうした好事例が出てきている。JTBの旅行、交流に関する知見を生かし、取り扱いを拡大したい。また、最近増えているのが、訪日外国人旅行者に自社の商品・サービスをPRしたいという相談。効果的な市場調査やプロモーションの手法について検討しており、提案を強化したい」
――25年度のテーマは。
「培ってきたM&Eのクオリティを高めてさらに収益を上げたい。そうすればプロモーションの受注にもプラスになる。そのためセールス・イネーブルメント(営業組織の効率化やセールス高度化)の推進をテーマに掲げている。企画書や報告書、マニュアルなどはイントラネットで共有し、作業時間を減らしてセールスにかける時間を増やしていく。外部のシステムを導入するなど相当の投資をしたので、具体的な成果に結びつけたい。売上高の目標は24年度比110%だが、コスト削減に社員が知恵を出してくれており、原価率を下げることで売上総利益は120%ぐらいにできると考えている」
――M&Eやプロモーション以外で、今後のポイントとなる取り組みは。
「グローカル・サステナビリティ・プロジェクトを紹介したい。次世代を担う企業人を対象に、異業種交流を通じて地域課題を解決する実践型プロジェクトで、参加者は大企業の若手社員。地方の温泉地や観光地に赴き、フィールドワークを通じて地域の課題に触れ、解決策を考えていただく。実際に事業の立ち上げにつながり、地域活性化に貢献した事例もある。25年度で第6期を迎えるが、これまでに約120人の卒業生が出ている。企業のEVP(エンプロイー・バリュー・プロポジション、従業員に提案できる価値)を高め、当社にとっても企業とのエンゲージメントを深めるABM(アカウント・ベースド・マーケティング)戦略の一つになっている」
「また、ビジネスソリューション事業本部には、『未来創造部会』というコミュニティがあり、企業や社会の課題解決に向け、外部とも意見交換しながら、新規事業の立ち上げを探っている。規格外野菜を活用する『ロス旅缶』もここから生まれた事業だ。新たに事業化に近づいている案件もあるので、今後に注目してほしい」
――旅ホ連との連携は。
「M&Eやプロモーションの取り扱い拡大に向けて、交流・イベントの場として、また、プロモーションの場として、旅ホ連会員の旅館・ホテルをもっと活用したい。もちろん皆さまにメリットがあるような提案をしていく。一方で、クライアント企業が宿泊施設に求めるサステナビリティの水準が厳しくなっている。CO2や食品ロスの削減、人権への方針などを提案書に記載するよう求められるようになった。JTBグループとしてもサステナビリティを事業戦略に組み込んでいるので、旅ホ連の皆さまにもご協力をお願いしたい」
大塚専務