
石橋代表
期間中、今までにない予約もIRへ人々の意識変わるか
大阪市の繁華街、道頓堀に位置する旅館「大和屋本店」の石橋政治郎代表取締役に、万博開催の意義や、万博が今後の大阪観光に及ぼす影響を聞いた。
――万博の開幕から1カ月。現在の状況は。
当館は大阪の真ん中にある和風旅館。以前から修学旅行、特に支援学校のお客さまを多く受け入れてきた。障害のある方がお泊まりになる場合、付き添いの方が必要で、その際はツインなどの洋室よりも多くの付き添いの方が入れる和室が重宝される。
万博期間は、今まで来られたことのない学校から予約を頂くようになった。一般団体のお客さまはコロナ禍前の30%しか戻っていないが、修学旅行はほぼ戻り、万博期間中はコロナ禍前より多い状況だ。
インバウンドのお客さまはこの1~2年、ずっと好調で、今も伸び続けている。
万博プラス恒久的なインバウンド需要で、4月の売り上げは過去最高。稼働率はほぼ100%という状況だ。
――万博を機に、新たに行ったことは。
アルバイトを含めた全従業員に万博のチケットを配った。お客さまに万博に関する情報をしっかりと説明できるようにするためだ。
ある程度のデジタルスキルがなければ会場で困ることがあったり、交通機関ごとにゲートが異なったりする。現地に行かなければ分からないことも含めて、自分の目で見て確かめてほしいと思った。
――石橋さんも会場に何回か足を運びに。
2回ほど行っている。今月末にもう一度行こうと既に予約をしている。万博は個人的に好きで、1970年の大阪万博は何回も行き、数時間並んで「月の石」も見たし(笑い)、90年の大阪花博や05年の愛知万博も行った。
――今回の万博で特に興味を引かれたものは。
パビリオンでは石黒浩さん(大阪大学教授)プロデュースの「いのちの未来」。有名人のアンドロイドが面白く、おばあちゃんとお孫さんの命に関するストーリーが感動的だった。海外のパビリオンもそれぞれかなり凝っていて面白い。
――万博開催の意義と今後について。
大きなイベントがあったり、新しい施設ができたりすると、その時は良いのだが、必ず反動が起きる。当館はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)が開業した翌年に売り上げが大きく落ちた。
今回もある程度の覚悟はしている。日本人のお客さまは間違いなく減るだろう。ただ、今はインバウンドの効果が大きく、万博が終わったからといって、極端にお客さまが減ることはないはずだ。
万博が成功を収めることで、大阪で計画されているIR(統合型リゾート)に対する反対の声が減る可能性がある。「万博のおかげで売り上げが上がった」「大阪のためになった」と、さまざまな業種の人が実感すれば、IRに関しても「今までは反対していたけど、ありかな」と、意識が変わるかもしれない。
石橋代表