
田川博己氏
創刊100年に向け、本紙の進むべき道とは何か。長年本紙と深く関わられてきた識者や経営者、これからを担う経営者に、本紙に期待する、果たすべき役割について、提言を頂いた。
今こそツーリズム産業の基幹産業化実現を!
観光経済新聞が、75年にわたり観光や旅行の専門紙として業界の発展に貢献されてこられましたことに、心から敬意を表します。
観光という言葉は、国際的にはトラベル&ツーリズムと言います。トラベルは旅行で、ツーリズムは私が2018年に出版した「観光先進国をめざして」の中で「人々の流れを創出して、交流、消費を促すとともに、新たな価値観を創り出す活動」と定義しました。ツーリズムには、人々の交流を通じて新たな価値観を創出する力があります。
03年に小泉政権がビジットジャパンキャンペーンを開始し、観光立国推進基本法が制定され、観光が21世紀における重要な政策の柱として、初めて位置付けられました。08年に観光庁が設立されましたが、観光はまだ歴史が浅い産業です。
ツーリズムは、そのすそ野が極めて広く、旅行業、宿泊業、乗り物業、飲食業、観光施設等の観光のメイン産業の周辺に地域の特産品、伝統工芸品、娯楽、スポーツ施設、写真や映像、雑誌や出版、情報提供サービス等、多くの事業が関わっています。今後は、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、SDGsといった考え方のもとで、ツーリズムはますます重要な役割を果たすことになります。
「旅の力」には、文化、交流、経済、健康、教育の五つの力があります。特に交流の力、文化の力は重要で、人々に楽しさや感動、安らぎや喜びをもたらし、共に生きる社会の基盤や文化を醸成し、質の高い経済活動を実現します。スイスのダボスで開催される「世界経済フォーラム」では、世界各国の旅行観光開発指数の順位が発表されます。日本は、09年の25位から順調に順位を上げて、21年に世界1位となりました。
日本は非常に衛生的で治安も良く、鉄道、空港、道路等のインフラ整備もすばらしく、自然の観光資源や文化資源、気候や食、どれをとってもその豊かさは他の国の追随を許しません。今や世界中から日本に大勢の観光客(インバウンド)が押し寄せて来るのも当然のことなのです。
観光経済新聞には、観光庁が文化庁やスポーツ庁と一緒になり、観光省を設立する機運醸成を図り、ツーリズム産業の真の基幹産業化を実現することに期待いたします。また、観光立国の基本理念である「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を地域経済活性化に向け、強力に推し進めるべき時と考えます。
田川博己氏