環境省、国立公園で高付加価値観光 アクティビティの指針整備へ


環境省の中原一成氏が講演

 日本アドベンチャーツーリズム協議会は12日、アドベンチャーツーリズム・アカデミーのオンライン一般公開講座を開催した。「国立公園における保護と利用の好循環に関する政策」をテーマに、環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室室長補佐の中原一成氏が講演。日本の国立公園制度を理解し、国立公園における保護と利用の好循環に向けた各種政策、ルール、事業を学び、自然環境保全と地域経済向上の両立を目指すアドベンチャーツーリズムの発展について考察した。

 環境省は2024年3月、国立公園における自然体験アクティビティの質向上と地域価値を高めるためのガイドラインを発表した。このガイドラインはアクティビティ提供事業者向け。中原氏は「コンセプト、マーケティング、プログラム、ガイド人材、外国人対応などを含む『アクティビティ開発』、感染症対策や緊急時対応などの『安全対策・危機管理』、環境保護・保全や地域との関わりなどの『環境への貢献・持続可能性』を重視している」と説明した。

 ガイドラインは個別事業者の取り組みによるフェーズ1と、地域ぐるみでさらなる質の向上を目指すフェーズ2に分かれている。世界基準である「アドベンチャートラベルガイドスタンダード」も参照して作成されており、国際的な水準を意識した内容となっている。

 環境省は23年度、全国14地域で自然体験アクティビティツアーの開発を支援した。例えば阿蘇くじゅう国立公園では「千年の草原の限定体験」をコンセプトにeマウンテンバイクで普段立ち入れない草原をライドするツアーを開発。参加料の一部が草原保全に還元される仕組みを構築し、保護と利用の好循環を実現している。

 24年度も13地域で伴走支援を行っており、専門家も交えて商談会などを通じて海外向けツアーの造成を支援している。
 中原氏は「上質な魅力的なツーリズムを提供するには、インタープリターなどの人材育成も大事だ。環境省では毎年、自然を生かす上質なツーリズム人材育成の支援事業を行っている」と述べた。

 講演の締めくくりとして、中原氏は国立公園における「本物のアドベンチャートラベル」実現に向けた視点を示した。「本物のアドベンチャートラベルは、ストーリーに沿った体験の組み合わせでトランスフォーメーション(変容)を起こすことが重要だ。エコツーリズムの理念を基盤として、アドベンチャートラベル層にアプローチし、地域のストーリーを伝えるためのインタープリテーションの一環として自然体験アクティビティを位置づけることが大切だ」と強調した。

 また、価値と価格を上げていくツアーデザイン、長期滞在を基本としたツアー作り、限定体験による高付加価値化、適切なマーケティングとターゲティングも欠かせない要素だという。そして何よりも「保護と利用の好循環の仕組み」がアドベンチャートラベルには不可欠だと指摘した。

 中原氏は自身もスキーヤーやマウンテンバイカーとして国立公園の自然を楽しんでいることを明かし、「国立公園は自然を楽しんで感動して学びを得る場所。人生を変えるような体験ができる素晴らしいフィールドなので、一緒に魅力的な国立公園にしていきたい」と締めくくった。環境省の取り組みにより、今後国立公園における高付加価値観光の展開が期待される。


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