
本保芳明氏
創刊100年に向け、本紙の進むべき道とは何か。長年本紙と深く関わられてきた識者や経営者、これからを担う経営者に、本紙に期待する、果たすべき役割について、提言を頂いた。
観光経営の改革と発展の道標に
創刊75周年、誠におめでとうございます。75年の長きにわたって、新聞発行を続けられてきたこと自身が、観光業界の貴紙への信頼と支持の証であり、読者の一人としても、感謝と敬意の念を表する次第です。
観光界においてこの75年間で最も目覚ましい変化は、観光の社会的地位の著しい向上とインバウンド急増による観光産業の構造変化と考えています。観光の社会的地位向上については、貴紙が、その先導役の一端を担ってこられましたが、近年その成果を実感することができるようになったことは、まさにご同慶の至りです。
インバウンドの急増により、東京等では宿泊客の半数以上を外国人が占めるに至っており、また、旅館とは異なる競争条件にある簡易宿泊所や民泊が急増する等明らかに観光産業において構造変化が起きています。その中で、地域文化のショーケースと位置付けられる旅館が十分な役割を発揮できておらず、その将来が懸念されております。
旅館が、外国人の宿泊にのみ活路を見いだす必要はありませんが、この構造変化の中で、自らが取り組むべき顧客セグメントを見極め、それにふさわしい経営戦略を定め、これを実施に移していかなければ、個々の旅館の生き残りが困難であるだけでなく、旅館全体の地位が低下し、地域文化・経済の担い手の喪失につながるものと懸念しております。
そのような事態を招かないためには、政府が健全な競争環境を確保するとともに、旅館経営者が産業動向を的確に把握し、経営スキルを高めて経営改革を推進し、連携して行政等のステークホルダーと協調していく必要があると思っています。
まさにこの点において、業界の立場に立って、適時適切に産業動向を把握・発信し、最新の経営情報を分析、深化させて経営者に提供するとともに、連携の場を提供する専門紙は大きな役割を果たし得るものと思っております。
観光経済新聞が、引き続き観光経営の改革と発展の道標たらんとの思いを新たにして、さらに発展されることを期待するものです。
また、貴紙は、日本の観光75年を継続してカバーしてきた貴重な歴史の証人でもあります。紙媒体としての特性を生かして、日本の観光史づくりにも大きな役割を果たすことを期待していることも、書き添えさせていただきます。
本保芳明氏