それぞれ取り組みを語る原氏（写真右）と岡藤氏（同中央）
旅館は地域のショーケース おもてなし文化の発信課題
Ｂｏｏｋｉｎｇ.ｃｏｍの日本法人、ブッキング・ドットコムジャパン（ブッキング・ドットコム、東京都渋谷区）は22日、大阪・関西万博のオランダパビリオンで、旅館業界の課題と展望について考えるイベント「オーセンティックジャパン」を開いた。全国から旅館施設関係者ら約80人を招待。旅館経営者の代表が取り組みを発表したほか、同社が今後の方針などを発表した。
同社が旅館を対象にしたイベントを行うのは初めて。大阪・関西万博に同社本社のあるオランダがパビリオンを出展していることから、日本文化を集めた旅館の魅力などを語る場を持つことで、日本とオランダの文化、経済交流を深めようと企画した。
冒頭あいさつした、同社アジア太平洋地域担当マネージング・ディレクターのローラ・ホールズワース氏は、「日本政府の訪日外客6千万人の目標達成のためには、地方への送客が重要であり、旅行者の求める、ユニークな文化体験、宿泊体験ができる宿泊施設を特に重視している。多くの旅行者が望む、自分の旅行によってその土地がより良くなる旅やサステナブルな旅を、新しい技術によって皆さんと一緒に提供していきたい」と意欲を語った。
続いて行ったトークセッションでは、同社北アジア地区統括ディレクターの竹村章美氏を聞き手に、油谷湾温泉ホテル楊貴館（山口県長門市）の岡藤明史氏、ホテルおかだ（神奈川県箱根町）常務営業部長の原洋平氏が発表者として登壇。訪日客の増加に対する意識や取り組み、変化する顧客トレンドへの対応策、描いている旅館の未来について取り組みや考えを語った。
このうちインバウンドの増加などによるニーズの多様化やサービス面の改善点について岡藤氏は、顧客ニーズを瞬間的に感じ取る力が求められているとの考えを語ったほか、スタッフにも外国人が増えていることに触れた上で、日本人、外国人という隔てがなくなり、日本の文化をお客さまに伝える仲間としてワンチームで進んでいくという力が生まれたとした。
原氏は箱根ＤＭＯの立場から、年間約2千万人の観光客のうち、コロナ禍前に12～13％だった外国人比率が現在は17％まで上昇している状況を紹介。観光客に取っているアンケートから、2食付きを予約する割合が、日本人は74％である一方で、外国人は30％であることを紹介。「食事をするために町に出る外国人が非常に多い。こういったところをベースに旅の楽しみ方が変わってきていると感じる」と述べた。
旅館の未来について岡藤氏は、コロナ禍に館内に作った県内酒蔵の日本酒バーを例に挙げ、「守られてきたものを磨いてつなげていくことが結果的に守ることにつながる。地域の魅力が詰まった旅館は地域のショーケース。旅館を入り口に地域の文化や歴史を少しだけでも体験してもらえるようにしたい」、原氏は「1泊2食が主流で滞在時間、接客時間が長いことで、おもてなしそのものを学び、それが文化となってきた面もある。海外の方にとっては非常にユニークな体験だと思うので、こういうことが伝わるようブッキング・ドットコムにもお願いしたい」と訴えた。
このほか、同社渉外部門最高責任者のピーター・ロックビラー氏とオランダパビリオン・プロジェクトディレクターのアイノ・ヤンセン氏がオランダパビリオンの建築コンセプトや日本との関連性などについてセッションを実施。
同社最新のＡＩテクノロジーについては、プロダクト担当シニアディレクターのアドリアン・エンギスト氏がキースピーチを行い、生成ＡＩとの会話により、旅行先や旅程の提案を行う機能を紹介。今年度中に日本国内で使用できるようにする方針であると説明した。
終了後には、オランダパビリオンの体験ツアーを行ったほか、交流パーティーを行った。
それぞれ取り組みを語る原氏（写真右）と岡藤氏（同中央）
