
JR京都駅から歩いて7分、好立地が売りの「京の宿 北海館 お花坊」。目の前には、真宗大谷派の本山、東本願寺があり、同館からは御影堂門はじめその荘厳な伽藍(がらん)を望むことができる。若旦那の小西崇文さんは、「ターミナル駅から近いものの往来の人はそれほど多くなく、静かで落ち着いた雰囲気」とアピールする。
3階建ての木造の館も同館の特色の一つ。元々は東本願寺の宿坊として明治期に建てられたもので、北海道の門徒の詰所であった。これを譲り受け、1915 年に旅館として営業を開始。25年前に、京都の昔心を感じさせる宿としてリニューアルを行い、花が大好きな女将、小西綾子さんの思いを込めて「お花坊」と掲げた。館内には創業当時から残る松の一枚板を使った大きな階段をはじめ、最近は見かけなくなった網代天井や手彫りの欄間などを目にすることができる。
このほど、二つの客室を一つの特別室に改装した。コロナ禍で客足が途絶える中、お客さまが戻ってきた時に「前よりも良くなったね」と言われる取り組みを行いたいと、崇文さんと姉で若女将の茉友さんが中心になって進めた。客室名は「たいせつな花」。古い旅館の建具などを再利用した趣ある客室には、唐紙の老舗「雲母唐長」に特別に依頼して作ったアートパネルが掲げられ、清新さと共に京都らしい伝統美が楽しめる。
新客室の名前は常連客から募集。「皆さま、当館とのエピソードも書き添えて下さり、愛されていることを実感しました」と茉友さん。崇文さんは「たいせつな花は、私たちがお花坊を背負っていくという責任や覚悟のシンボルでもあります。昔心に加え、京都の『本物』を味わえる宿として、国内外のお客さまに喜んでいただける施設にしていきたいです」と語った。
【10室、1泊2食税込み2万7500円から】
京都らしい伝統美が楽しめる特別室「たいせつな花」