
第1回の会議
人手不足解消とDX推進へ、業界横断の取り組み
宿泊施設関連協会(JARC)は5月21日、宿泊施設の調理業務における課題解決と未来展望を図ることを目的に「フードテック協議会」を組織した。座長には、一般財団法人アジアフードビジネス協会理事長の渡辺幹夫氏が就いた。同日、第1回会合を同協会会議室で実施。グローバルツーリズム経営研究所の永山久徳氏を講師に招き、「宿泊業界の意識改革セミナー」も開いた。
協議会は、宿泊施設の飲食部門が直面する人材不足や環境負荷低減などの社会問題に対し、フードテックを活用した解決策を模索する。JARCによると、宿泊部門と比較して飲食部門はテクノロジー導入が遅れており、食中毒やアレルギー対応など人命に関わる重要な役割を担っているという。
同協議会では、「調理・料飲部門の生産性向上×フードテック」「個人の多様なニーズを満たし心身の健康を実現するフードテック」「持続可能な食材提供×フードテック」の3つをテーマに掲げた。具体的には、調理機の自動化、衛生管理の自動化、在庫管理の自動化、原価率自動管理、レシピのデジタル化、調理手順の見える化、モバイルオーダー、配膳ロボットの活用などを議論していく。
永山氏による意識改革セミナーでは、テクノロジーと人間の共存による新たな働き方が提唱された。単純作業や反復作業は機械に任せ、人はより創造的で価値の高い業務に集中すべきだと指摘。配膳ロボットの導入事例を挙げ、スタッフのモチベーションを損なわない形での機械化の重要性を強調した。
同協議会には、株式会社当間高原リゾート、ザ・キャピトルホテル東急、日本ホテル株式会社、富士屋ホテル株式会社などの宿泊施設のほか、TECMAGIC株式会社、株式会社カミナシ、株式会社イートアンドインターナショナル、アセットフロンティア株式会社、株式会社CANEATといったメーカーや技術企業が参加。業界横断的な知見の共有と課題解決を目指す。
今後の協議会スケジュールも明らかになった。6月18日の第2回会合では料飲部門の生産性向上と持続可能な食材活用の現状と課題、7月14日の第3回では改善策およびシステム開発提案、8月20日の第4回ではアレルギー・食の多様性対応およびテクノロジーサービス活用の現状と課題、9月16日の最終回では改善策および協議会のまとめを行う予定だ。
参加者からは、冷凍技術の進化による食材活用の可能性や、アレルギー情報管理のDX化による業務効率向上などの具体的な提案が出された。また、インバウンド需要の高まりを見据え、多言語対応や食文化への深い理解の必要性も指摘された。
JARCは「安全・安心・清潔・エコ・コンビニエンスで持続可能な地域観光を目指す」というビジョンのもと、本協議会を通じて宿泊施設の飲食部門における課題解決と未来展望を具体化していく方針だ。
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