
鵜匠と鵜の見事な連携、伝統の鵜飼漁
~朝倉市政20周年、伝統と新たな賑わいが融合~
福岡県朝倉市の原鶴温泉で5月20日(火)、毎年恒例の川開きイベントと、実に6年ぶりとなる「第70回原鶴温泉川開き花火大会」が同時開催された。主催は原鶴温泉旅館協同組合(井上善博組合長・全旅連会長)。初夏の訪れを告げる伝統漁法「筑後川の鵜飼」の幕開けと、筑後川の鮎漁解禁を祝うこの日、待ちわびた2000発の花火が夜空を飾り、温泉街は多くの地元客、観光客で賑わった。今年は原鶴温泉が所在する朝倉市の市政20周年という記念すべき節目とも重なり、地域全体が祝賀ムードに包まれた。
歓声と拍手、復活の花火に沸く多くの観客
コロナ禍乗り越え、地域一丸で復活を祝う
2019年を最後に、新型コロナウイルス感染症の影響などで中止を余儀なくされていた花火大会。その復活に向け、原鶴温泉の関係者や地元有志のボランティアは、数ヶ月前から準備に奔走してきた。色とりどりの花を温泉街に植え、広大な筑後川河川敷の芝を整備するなど、昼夜を問わず空いた時間を見つけては作業に汗を流した。サプライズ花火を定期的に打ち上げるなど、今では「花火の聖地」としても知られる原鶴温泉だが、この地元の一大イベントの復活にかける想いはひとしおだった。
明るい時間の鵜飼、そして夜空の饗宴へ
イベントは2部構成で進行。第1部では、子供みこしが元気よく練り歩き、厳かな川開きの神事が執り行われた後、鵜飼観賞の屋形船が出航した。多くの報道陣も乗船したこの日の鵜飼は、夜の花火大会開催のため、通常よりも早い時間帯での運航となった。これにより、鵜匠が鵜を巧みに操る手さばきや、鵜船の動きが明るい中でより鮮明に見られ、屋形船からは大きな歓声が上がった。
鵜匠と鵜の見事な連携、伝統の鵜飼漁
『古事記』や『日本書紀』にも記述が残る歴史ある鵜飼。現在、全国でも11カ所、九州ではわずか2カ所でしか見ることができない貴重な伝統漁法だ。筑後川の鵜飼は、領主などの手厚い保護を受けてきた他地域の鵜飼とは異なり、生活の糧を得るための「漁」として受け継がれてきた歴史を持つ。そのため、袁笠や、かがり火を用いない屋形船と鵜舟が共に川を下る「流し舟」という全国的にも珍しいスタイルが特徴。鵜と鵜匠が織りなす見事な連携を間近で体感できるのが魅力だ。
そして迎えた第2部、午後8時からは待ちに待った原鶴温泉花火大会がスタート。この日のために特別に1280台収容の駐車場が用意され、筑後川河川敷には55店舗もの屋台が軒を連ね、祭りの雰囲気を盛り上げた。公式発表の2000発に加え、特別追加の打ち上げ花火や、原鶴温泉トリビアクイズと連動した花火、いばらき若旦那のデビューシングル「O・MO・TE・NA・SHI(おもてなし)」に合わせた宿の日花火など、観客を楽しませるための趣向を凝らした演出が次々と繰り広げられ、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。
6年ぶりに夜空を彩った感動の復活花火大会
万全の体制で迎えた祝祭の日
久しぶりの大規模イベント開催にあたり、地元の消防、警察と警備体制について綿密に協議し、万全の準備を整えた。当日は交通規制も敷かれるほどの大賑わいとなり、原鶴温泉に活気が戻ってきたことを印象付けた。
原鶴温泉旅館協同組合の井上善博組合長は、「6年ぶりに開催できた花火大会。長期化したコロナ禍で中止せざるを得なかったが、本日、最高の天候の中でこの日を迎えられたのは、ボランティア活動で準備をしてくれた地元組合有志、および地元関係機関の皆様方の支援のおかげ。苦労も大きかった分、喜びと安堵の気持ちでいっぱいです。また、筑後川河川事務所さんのおかげで筑後川の浚渫(しゅんせつ)も例年以上にしていただき、今回の川開きでは大型の二層船を出すことができたことも昨年との大きな違いです」と、感謝の言葉とともに喜びを語った。
復活祝う川開きに喜び語る井上組合長
筑後川の鵜飼は、5月23日(金)から9月30日(火)まで、金・土・日曜日を中心に観賞用の乗合屋形船が運航される予定。伝統の技と初夏の風物詩を、ぜひ多くの人に楽しんでほしい。6年の時を経て復活を遂げた花火大会と、歴史ある鵜飼の共演は、原鶴温泉の新たな魅力と賑わいを力強く発信する一日となった。
【九州支局長 後田大輔】