【体験型観光が日本を変える393】日本の景気左右する関税問題 藤澤安良


 大阪・関西万博は悪天候の中で開幕した。まだ四つのパビリオンが完成していないままではあるが、1週間で60万人を記録した。マスコミの報道が増えるに従って関心が高まり、6カ月後の会期末には想定していた入場者数に届くと思われる。

 4月はもうすでに本州域でも真夏並みの気温である30度を上回るなど、これから夏に向かうと会場での熱中症対策が求められる。

 もっと心配なのは日本の景気に大きく影響する米国との関税であり、トランプ大統領の計り知れなく、出方が読み切れない米国との交渉の行く末である。したたかな駆け引きが求められる政治ゲームの様相を呈している。

 米国から輸入拡大を迫られるのは農産物、とりわけ米や果物、そして自動車などが上がっている。日本国内は米不足で高騰している中で、応急処置として近年おいしくなってきているカリフォルニア米の輸入が増えることになるであろう。

 日本の米農家は1戸あたりの耕作面積が少なく、米で生計が成り立たない零細農家が多い。従事者年齢が平均69歳と高齢であり、後継者不足に悩んでおり、実情に合っていない減反政策、獣害や耕作放棄地、食料自給率がカロリーベースで38%と食料の多くを輸入に頼っている日本は今、持続可能な農業の未来に向かって根本的に制度や法律を変える時期でもある。

 米を筆頭に、物価の高騰は国民の生活を圧迫し、先行きの不透明感は旅行マインドに水を差している。給付金や減税の話題は瞬間的にはありがたいと思えるが、国家財政からの支出であり、その場しのぎの対処療法に過ぎず、いずれにしろ国民に付けが回ることになる。

 物価に追いつき、追い越すように賃金が上がり、総合的な生産性を高めることが不可欠である。労働、経済、金融が一体となって日本の国際競争力を上げる必要がある。

 食料も資源も少なく、モノづくりもアジア諸国に出て行ってしまった日本は、付加価値にこだわり、高価値高品質を目指さなければならない。

 さらには、四季の自然と食と固有の歴史文化を資源とする観光は伸び続けているが、肝心の日本人の余暇活動としての旅がコロナ前に戻りきらない現状を打破したいが厳しい。

 日本の国際競争力が低下している。その原因の一つは生産性の低さだ。シンクタンク「日本生産性本部」の調べでは、日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は、2022年のデータでOECD加盟38カ国中の31位だった。G7で最下位である。

 また、米ギャラップの調査によると、仕事への熱意や職場への愛着を示す「エンゲージメント率」が、イタリアと並んで日本は145カ国中最下位の5%で、4年連続で世界最低水準となった。さらには、幸福度ランキングでも55位と先進国の中でも低く残念な結果である。

 日本人は人と話さない人と関わらない自己中心の働き方の姿勢を根本的に改める必要がある。人間力の向上に着目した人間教育が必要になる。体験交流による人材育成こそが日本の未来を築く特効薬である。


(観光経済新聞2025年4月28日号掲載コラム)

 
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