【VOICE】離島・家島の実践から いえしまコンシェルジュ株式会社 いえしま案内人 中西和也氏


いえしまコンシェルジュ株式会社 いえしま案内人 中西和也氏

観光地の価値を問い直す

 観光の在り方が再考される時代に、「観光地」とは何かを考え直す必要があります。私は兵庫県姫路市の離島・家島で、島の暮らしに溶け込む観光の形を模索してきました。その取り組みが今、他の地域にも展開できると確信しています。 家島は決して「有名観光地」ではありません。観光のガイドとして、観光客が島の暮らしに自然と溶け込む体験を提供しています。

 例えば、島の人たちに混ざって漁師さんが取ってきた魚を見せてもらい、魚屋さんで新鮮な魚を買い食いしてみる。路地裏では島のおばちゃんたちの立ち話に交ざり、暮らしぶりを聞きながらおしゃべりに花が咲く。本屋さんでは駄菓子とジュースを手に、店主と気ままにしゃべったり。旅行者からは「まるで自分も島の一員になったみたい」と喜ばれています。

 結果として、観光客は「消費するだけ」の存在から、「島の暮らしに参加する」関係へと変化しました。この関係性が、観光地に持続可能な経済循環を生みます。島内の店舗や住民が観光に関わる機会が増えています。現在この取り組みをバージョンアップさせ、ガイドがいなくても成り立つ仕掛けづくりに挑戦しています。

 「家島だからできた」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。ポイントは、地元の人が無理なく関われること、訪れる人が「地域の日常」に入り込めること。

 例えば、観光客が地元の人と同じ目線でその土地の時間を共有し、ふだんの暮らしの中にある小さな営みに触れる瞬間を大切にすることです。どんな地域にも、その土地ならではの「暮らしの余白」があります。この仕組みは、地域ごとの特性に合わせて展開可能です。実際に、他の離島や地方都市からの視察対応・相談に応じています。大学での講義、他地域での講演や現地でのフィールドワークを行いながら、家島の実践を伝える機会が広がっています。

 観光とは、ただの消費行動ではなく「そこに流れる時間や関係を感じること」ではないでしょうか。地域の暮らしがあってこそ観光は成り立ち、それがなければ表面的なものに過ぎません。土地の営みが息づいているからこそ、人はそこに魅力を感じます。地域の人々が自信を持って楽しみながら観光と関われる仕組みこそが、観光地の価値を高めると確信しています。地域の観光振興に携わる団体の皆さん、地域の暮らしを生かした観光の形を一緒に考えてみませんか。その第一歩を一緒に踏み出しましょう。


いえしまコンシェルジュ株式会社 いえしま案内人 中西和也氏

 
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