【VOICE】宿泊業のISO取得 草津温泉ホテルヴィレッジ 社長 中澤一裕氏


草津温泉ホテルヴィレッジ 社長 中澤一裕氏

国際規格認証で「家業から企業へ」

 当社は昨年、宿泊施設の持続可能性マネジメントシステムISO21401を国内初で取得しました。本規格は宿泊施設の持続可能性への取り組みを国際標準に基づき、環境・社会・経済の三側面に目標設定し、実行する国際規格です。過去に掲げたSDGs目標を基に全体目標を設定し、各部署で全業務をプロセスに分解、リスクと機会を検証。各課題の解決方針を文書化・目標化しました。

 いままで、ホテルの思いや理念は何となく共有されているつもりでしたが、昨今の国際化・働き方・生産性・宿への期待が多様化する中で、経営姿勢を何らかの指針に基づき文書化し、共有する必要を感じたことが出発点です。

 現在の経営環境下では、宿泊施設の評価はサービス品質と環境対応に特化されます。

 行政もコンプライアンスは当然に、世界基準の環境問題と生産性の改善が優先課題です。旅の目的・趣味嗜好も多様化する中で、外部の口コミ・アンケート数値が運営企業の評価そのものになることに違和感も抱いておりました。

 当社同様、地方の宿泊業の皆さまは、地域に根差し、その魅力を磨き、自然や文化の保護に努め、地域の経済・雇用を守り、地域ブランドを作り上げてきたことに自負をお持ちと思いますが、その取り組みの評価指標は、経営者の地方政治参加や職域経済の要職等で、社員の参加を評価する機会は少ないように感じていました。コロナ禍では宿泊産業の裾野の広さを再認識しました。

 私たちには「宿屋の思い・哲学」があります。自然・文化・人・食材を通じて地域の光(=観光)を魅せることで地域経済を担う役割があります。

 本認証取得は想像以上に大変でしたが、この間、社員の言動や意識、法令や安全衛生への姿勢の大きな変化を実感しました。いま地方就労を考える若者は、地域創生やまちおこしに興味があるとうかがいますが、私たちはその一翼を担う機関です。

 私たちのような都市から離れ、山間部寒冷地・地域事情大の立地で、国の求める環境課題を満たし、意欲ある若者を集めることには難しさがあります。

 地方のホテル・旅館が「家業から企業へ」成長するには、いまこそ地方中小企業が国際規格に基づき、環境・経済・社会への具体的目標と行動を発信することは大企業以上に重要と考えます。

 私たちの取り組みが、地域の持続可能性、人材の確保育成・定着の基礎となることを願ってやみません。


草津温泉ホテルヴィレッジ 社長 中澤一裕氏

 
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