
交流を生み出す空間「JAMフロア」
新築マンションの建設業などを展開する新三平建設(東京都台東区)のグループ会社・SAWANAは4月21日、同社が栃木県那須塩原市の板室温泉で運営する「那須フィッシュランド」内に地域共生型の宿泊施設「ゲストハウスLeu.(レウ)」を開業した。観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」を活用し、コロナ禍で営業を休止していた温浴施設をリニューアル。長期滞在を可能とする個室や共用設備などを備え、「暮らせるゲストハウス」を目指す。
「観光産業の再生・高付加価値化事業」を活用
那須塩原市は、板室温泉や塩原温泉といった観光地を有し、首都圏からのアクセスの良さから40・50代以上のシニア層を中心とするファン層が定着している。近年は若年層の来訪者も増加傾向で、県内でも有数の人気観光地となっている。
一方、同市を含む県内の中山間地域では人口減少や地域産業の担い手不足、空き家の増加など複合的な問題を抱えている。さらに那須塩原市観光局によると、来訪する観光客も同市の温泉や宿泊施設に満足している一方、宿泊客の約82%が「1泊」にとどまっているとしており、交通アクセスが良好な半面「長期滞在」が同市の課題になっているという。
そこで今回、観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」を活用し、コロナ禍で営業を休止していた「那須フィッシュランド」内の温浴・宿泊施設「ほたるの湯」をリニューアル。施設名「ゲストハウスLeu.」は「寮」の歴史的仮名遣い「れう」に由来する。平安時代の官省「図書寮」や「陰陽寮」のような地域の中心的な施設となることを願い命名された。
施設内は、客室や共用部分を含め長期滞在を前提とした空間にリニューアル。客室は個室を10室とドミトリー21床(一般15床、女性専用6床)を用意した。個室10室のうち7室には自炊キッチンや冷蔵庫を設置しているほか、共用設備にもキッチンやコインランドリー、バーベキュースペースや宅配ボックス、オンラインミーティング用の空間「Zoom Box」などを完備。観光での滞在だけでなくリモートワークやお試し移住など、長期滞在が可能な空間に生まれ変わった。
プライバシーと快適性を備えたドミトリータイプの個室
源泉掛け流しの温泉
さらに、宿泊者同士で交流できる空間「JAMフロア」を新設。リラックスしながら交流できるよう、低めのテーブルやベンチを配置した。プロジェクターも設置しており、イベントやワークショップなど、多目的に利用できる空間となっている。
交流を生み出す空間「JAMフロア」
開業記念のセレモニーも実施
4月10日には、同館のリニューアル開業を記念してオープンセレモニーが実施された。那須塩原市観光局の織田智富局長、同市産業観光部ツーリズム推進課の和氣広美課長、新三平建設の飯田忠房代表取締役が出席し、テープカットを行った。
新三平建設の飯田社長は、同社が那須高原と関わってきた歴史的背景を説明。同社の前身・三平興業が太平洋戦争時に疎開した旧・黒磯市での材木商売から事業拡大してきた過去を紹介した。「(那須塩原は)いわば当社の発祥の地。感謝の気持ちを込めて社会貢献できればと思いほたるの湯を改修した。これも那須塩原市観光局さまの主導で『地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業』の地域計画に組み込んでいただいたおかげだ。インバウンドや若者が集まり、活気が出て地域の高齢者との交流を図り地域活性化に貢献できたらと思う」とコメントした。
セレモニーでのテープカットの様子(左から那須塩原市の和氣課長、新三平建設の飯田社長、那須塩原市観光局の織田局長)
同館では開業に合わせて公式サイトもリニューアル(https://leu.jp/)。宿泊や長期滞在の予約や施設の紹介ページに加え、施設内で開催予定のイベントや施設周辺の観光地紹介ページなども公開している。