
2020年2月に「ペットとお出かけ♪」というタイトルで、ペット同伴OKのカフェをご紹介した。たった5年前だが、当時テラスでなく、店内もOKな店は珍しかった。その直後からコロナ禍が深刻化。緊急事態宣言で街から人が消えた。
コロナ後、在宅ワークやオンライン会議などが定着し、人々の生活様式にさまざまな変化があったのはご承知の通り。そんな中、大きな成長を遂げたのがペット業界だ。今やペット関連産業の市場規模は2兆円ともいわれるそうだ。
日本でコロナ禍がスタートした20年、赤ちゃんの出生数(84万人)をペットの新規飼育数(87・6万匹)が上回った。ステイホームで人とのコミュニケーションが希薄になり、孤独感を埋めたいという心理的な理由や、リモートワークで家に居られる時間が増え、飼育しやすくなったという物理的要素が、ペットの増加につながったのだ。
ちなみに25年4月1日時点における15歳未満の子供の数は1366万人(総務省発表)。24年の犬猫飼育数は1595万匹(一般社団法人ペットフード協会)と、子供の数よりずっと多い。番犬やネズミ駆除の役割を担っていた犬猫から、人を癒やす「愛玩動物」へ、そして今、一緒に暮らす家族の一員として「伴侶動物」に進化しているのだ。
筆者にとっても、愛犬はわが子同然だった。過去形なのは、彼女がこの春虹の橋を渡ってしまったから。しばらくいわゆるペットロス状態が続き、見かねた家族が、新たな子犬を迎えることを勧めてくれたので、同じシー・ズーの女の子を迎えた。そしてこのたび、カフェデビューを果たしたのだ。
前の子ピノは、緑内障で両眼の視力を失ってしまったため、晩年はほとんど一緒に出掛けられなかったから、現在の業界事情を知らなかったが、ペット店内同伴OKの店がかなり増えているのには驚いた。今回伺ったのは、東京都森下の「PIZZA&CAFE TANTON」。ペレット窯で焼き上げるローマピザがメイン。「わんこピザ」など、犬用のオリジナルメニューもある。
まず犬用の水のお皿が運ばれてきた。ペットファーストだ。有頭エビのアヒージョや、チェリートマトとシラス、ガーリックが載ったトマトベースのピザ「チチニエッリ」などを注文し、シェア。取り分け用のお皿が温めてあったのにビックリ! 犬にも人にも配慮が行き届いている。
同じシー・ズーの男の子や、フレンチブルドッグのワンコ会など、多くの犬に会えたが、昔のようにキャンキャンほえる犬は皆無。イマドキちゃんとしつけられているのだ。わが子ノアも、パピースクールに通っている。犬たちは皆お利口に座り、お客同士が犬を介してあいさつするなど和やかな雰囲気に包まれ、お腹も心も口福なひと時だった。
天国のピノ、たくさんの幸せをありがとう。姉ピノはワインブドウ品種ピノノワールから名付けたから、妹は続きでノワをもじってノア。ピノの分も、これから一緒にいろんなお店に行こうね♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。