「日本クラシックホテルの会」が発行する「クラシックホテルパスポート」は、加盟する九つのホテルに宿泊して、スタンプが四つたまるとレストランのペアお食事券、九つでペア無料宿泊券がもらえるというもの。各ホテルショップで販売しており、滞在のその日から押印してもらえる。
実は3年前に9スタンプを制覇して、現在は2冊目に挑戦中だ。これは頑張る自分へのご褒美旅。先日も、加盟ホテルの一つ「奈良ホテル」が年明けから大規模工事で5月まで全館休館するというので、思い立って泊まりにいった。「メインダイニング三笠」では、1人でも堂々と食事にあわせてビールに赤・白ワインを注文。さらに「ザ・バー」のオリジナルカクテルで悦に浸った。朝食は伝統の茶粥(がゆ)で決まり。窓外には鹿たちが草をはんでいる。自分のことを考える良い時間になった。
かつて「川奈ホテル」に泊まったときのこと。現在、「西武・プリンスホテルズワールドワイド」執行役員の村井宏通さんと、現地で再会をした。予約者名簿で「もしや」と、フロントに私の写真を用意していた。その対応に、私よりも一緒にいた長男のほうが驚いた。気をよくしてその翌年、ゴルフ仲間と「川奈ホテルゴルフコース」でのプレーで再泊した。
恒例の年末家族旅行は今年、新たに家族の仲間入りをした長男のお嫁さんも加わり川奈ホテルを6人で予約中。今から楽しみだ。
日本最古のクラシックホテル「日光金谷ホテル」では、当時、取締役総支配人で「東武ホテルマネジメント」の奥間政宣さんに世話になった。渋谷東武ホテル時代に知り合った。あのとき一緒に会食した飯田謙一郎さんが、先日急逝された。ご冥福をお祈りする。
自身は筆をもっての仕事だが、ホテルマンにも同業の思いがある。本連載・第6回でつづっているので省くが、日本のホテル界を背負って立つ人たちだ。ますますのご活躍を祈念する。
そして忘れてならないのが、箱根宮ノ下の「富士屋ホテル」である。これまでもNPOの仲間や家族旅行で、たびたび泊まった。それが今夏、岩手県のご縁で(筆者は出生が岩手で「いわて観光立県推進会議委員」)、伝説のホテリエ・安藤昭代表取締役社長にお目にかかる光栄に浴したのである。
なぜ岩手県つながりかと言えば、安藤氏は国際興業グループ・花巻温泉で10年間、社長を務められたから。震災後の花巻温泉の経営基盤を建て直し、コロナ禍を乗り越えた。そして昨年、富士屋ホテルの社長に再び就任されたのである。地元・神奈川県のご出身で、同ホテルの生え抜きだから創業家からの信望も厚い。今年6月発行の「ニューズウィーク国際版」に安藤社長のインタビュー記事が掲載された。「日本に深く根づいた“おもてなし”の精神を大切にしている」。まさに日本を代表するクラシックホテルの神髄とも言えよう。
今回は朝食で初めて「旧御用邸 菊華荘」を利用した。和食こそ、料理長の腕の見せどころ。釜揚げしらすや小田原かまぼこなど地のものに、朝焼きたまごや蕗味噌(ふきみそ)など食も進む。しかも、ご飯は「米どころ花巻産 ひとめぼれ」。岩手愛も忘れていない。
クラシックパスポートの有効期限は3年間。旅は来年も続く。
(淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)




