
民間調査会社の帝国データバンクによると、昨年1年間のホテル・旅館経営業者の倒産は108件、負債総額は1638億4400万円だった。前年に比べ件数は3件増加。負債総額は101億1700万円減少した。件数微増、負債総額減少だが、「宿泊料金の下落や過去の設備投資が重荷となり行き詰まる老舗業者が後を絶たず」(帝国データバンク)、経営者にとって厳しい状況は依然続きそうだ。
大型施設の倒産は今年に入っても続いている。栃木県川治温泉の一柳閣本館は1月7日、東京地裁に自己破産を申請、同日に破産手続きの開始決定を受けた。帝国データバンクによると、負債額は約50億円。今後は旅館事業の継承を目的にスポンサーを探す意向だ。
同社は1934年創業。100室を超える客室や宴会場、大小会議室を装備し、01年11月期には売上高約11億3千万円を計上していたが、バブル崩壊後の団体客数と宴会の減少などで業績が低迷。メーンバンクの足利銀行の一時国有化や金融債務の整理回収機構(RCC)への移管などで状況がさらに悪化した。
静岡県伊豆・下賀茂温泉で旅館「伊古奈」を経営する伊古奈観光開発は1月28日、静岡地裁へ民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、負債額は14億7千万円。営業は平常通り継続しており、今後はスポンサーを選定して再建を図る。
同社は1937年設立。数寄屋造りの純和風を特色とした伊豆半島屈指の老舗高級旅館「伊古奈」を経営し、バブル期の1986年に約10億円を投じて改装オープン。営業拡大を図ったが、その後の不況と群発地震などの自然災害から集客数が減少傾向をたどり経営が急速に悪化。業績の回復が見込めない中、抜本的再建策が必要と判断、今回の措置に至った。
旅館のコンサルティングを手掛ける飯島綜研(本社埼玉県)の孫田猛社長は「今年は金利の引き上げ、物価高騰、消費者の可処分所得のさらなる減少により、さらに厳しい状況が予想される」と指摘。「顧客にとってコストパフォーマンスが抜きん出て高く、価値がわかりやすい旅館が選択されることを経営者は認識すべき」と述べている。
