DMO経営モデル探る 観光庁、検討会でヒアリング


検討会の第3回会合(12月13日)

着地型旅行業、施設運営、売店で事業収入

 観光庁の「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」(座長・矢ケ崎紀子東洋大学国際観光学部国際観光学科教授)の第3回会合が12月13日に開かれた。「DMOが実現を目指すビジネスモデル・地域の経済循環・来訪者の経験価値の向上」をテーマに、委員の有識者が日本版DMO登録制度に登録している3法人からヒアリングを行った。

 田辺市熊野ツーリズムビューロー

 地域DMOで対象区域は和歌山県田辺市。熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録、市町村合併などを契機に2006年4月に発足、10年5月に一般社団法人化。欧米豪のFIT(個人客)をメインターゲットにプロモーションや受け入れ態勢整備に取り組む。

 欧米豪のFITに熊野古道を歩いてもらうには、宿泊、2次交通、ガイドなどを提案する仕組みが必要として第2種旅行業を10年7月に取得。熊野エリアを対象に着地型ツアーなどを販売し、決済機能を持つウェブ旅行予約システムも運用している。

 着地型旅行事業の売上高は11年度には約4千万円だったが、訪日外国人の利用が右肩上がりで増加し、17年度には約3億6400万円、18年度は4億円を超える見込み。

 収入の柱は、着地型旅行事業の収入と市の観光プロモーション委託料(年間約3千万円)。田辺市熊野ツーリズムビューローの多田稔子会長は「旅行事業の収入は年々増え、利益は出ているが、田辺市からの委託料が減額されると成立しなくなる。安定した財源確保は課題」。もとより利益最優先でなく、地域振興に軸足を置いた組織だが、観光消費に伴う地域の経済循環に関する分析なども今後の課題という。

信州いいやま観光局

 長野県、新潟県にまたがる9市町村を区域とする一般社団法人で地域連携DMO。北陸新幹線・飯山駅開業を好機として10年4月に発足。自然体験などの情報提供や予約手配を担うアクティビティセンターを併設した「飯山駅観光交流センター」で観光案内を行うほか、着地型ツアーの企画、実施などを担っている。

 年間予算は約6億2千万円。自治体の指定管理者制度で運営する観光施設などの売り上げを中心とする事業収入が収入全体の約8割を占めるのが特徴。他の収入は自治体からの委託料や補助金など。

 新幹線駅の開業によるアクセスの向上、里山を歩く信越トレイルやスキーなどの人気でインバウンドも増加。9市町村の外国人延べ宿泊者数は12年度が約5万6千人泊だったが、17年度には約23万3千人泊に増加した。

 信越トレイルでは、外国人向けツアーの販売を担当。訪日旅行商談会への参加、英語サイトの作成によって海外旅行会社の商品造成につながった事例もある。信州いいやま観光局の柴田さほり氏は「訪日外国人の消費額は高いが、いかに伸ばすか。海外エージェントからランドオペレーターの機能を求められているが、日々のオペレーションを担う人材の確保が課題」と語った。

長崎国際観光コンベンション協会

 長崎市を対象区域とする地域DMO。観光客数などは順調だが、延べ宿泊者数やリピート率には課題もある。長崎国際観光コンベンション協会の外園秀光DMO推進本部長兼事務局長は「長崎観光が新たなステージに進むには、『循環するビジネスモデル』の構築が不可欠。DMOとして自ら稼ぐ、事業者支援、ストレスフリーの環境づくり―の三つの視点で取り組んでいる」と説明した。

 「自ら稼ぐ」では、18年度予算約6億8千万円のうち約6割に当たる約4億円を事業収入でまかなっている。事業収入は観光施設の売店や企画商品などの売り上げ。売店収入約2億2千万円については、市内の業者からの商品調達を重視する。

 「事業者支援」では、地元の「そのぎ茶」を生かした事業者の商品開発を支援し、海外向けプロモーションなどを展開した。観光庁の支援事業の導入により多様な事業者を連携させた夜間の観光コンテンツ育成にも取り組んでいる。
「ストレスフリーの環境づくり」では、外国人旅行者の受け入れ環境整備、MICEの誘致・受け入れ態勢の強化などに注力している。

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